僕の周りには女子高生と出会いを望んでいる男子生徒が多いけど、僕はそれが煩わしい。

 最寄の駅に着いたらいつも下を向き不機嫌に嫌な奴を演じて通学してたのに、今僕の掌には女子生徒から渡された封筒がある。

 優しいその色合いは恋を連想させる。物好きな女の子もいるもんだ……なんて言ってる場合じゃない。これは僕にとっては一大事だ。

 僕はとりあえずその封筒を鞄につっこんだ。でもそれが愛の告白と決まったわけじゃない。何かの警告かもしれないし、他にも予想もつかない可能性があっても不思議じゃない。

 それでも、僕は知らずと胸が高鳴って不覚にもドキドキしてしまう。一体なんてこった。どうしたらいいというのだろう。

 だって僕は西守透だ。

 中学の時この名前をもじって僕はこう呼ばれていた。

 「死神が通る」と。

 そう僕は死神だ。そして何人もの女の子たちをこの世から消してしまった。それはすべて僕が好きになった人たちで、僕を好きになってくれた人たちでもあった。

 僕は恋をして相思相愛になると、その女の子が死んでしまうことになるらしい。だから僕はもうこれ以上恋をするのが嫌だった。僕は誰も好きにならないし、誰にも好かれたくもない。

 どうかあの手紙が最悪の事態を招きませんように。

 肩にかけた鞄が急に重くなると同時に、いらぬドキドキが僕を苦しめる。またあの時の女の子たちや苦しかったことが思い出される――。