イベントを手伝ったその次の日の待ち合わせ場所に変化があった。映見が指定してきたのはこのあたりでも有名な大型施設のショッピングモールだった。
ショッピングモールの場所は分かっているが、ひとくくりにするには範囲が広すぎる。入り口も多数あるし店だって色々と入っている。一体どこに映見が居るというのだろう。
午後一時に待ち合わせしたものの、どこをどう探せばわからなかった。映見が行きそうな店。かわいい小物が売っている場所や、化粧品グッズがあるようなところを覗いたが居ない。端から端を往復するだけでも大変なのに、それが三階まであるんだから店をひとつずつ見て回るのも膨大な作業だ。
その時、僕のスマホからメール受信音が鳴った。もしやと思いすぐ確かめれば映見からだった。
――ヒント。『○の虫』に当てはまる漢字はなんでしょう。私はそこにいます。
『○の虫』でピンと来た。僕はメールをすぐに返す。
――腹の虫!
僕は映見の与えられたヒントの場所を目指す。手にしっかりとカメラを持ちながら。
それは二階の角の広々とした場所に位置し、ちょうどエスカレーターを上ったところにあった。
入り口に差し掛かると僕は辺りを警戒する。拾いオープンスペースには本がたくさん入った棚やディスプレイされた各コーナーが設けられている。それらに身を潜めたら隠れられそうだ。僕は慎重に映見を探した。
今頃映見は困惑しているだろう。○の虫とくればすぐに本の虫を想像する事を期待していたはずだ。
でも僕はわざと間違えて腹の虫と答えた。フードコートと勘違いしているんじゃないかと映見に思わせる。その油断したところを僕はカメラに収める。今度こそできるかもしれない。
忍者になったように、そろりそろりと棚の間を確認する。雑誌のコーナーを覗いたその時、居た! 映見はスマホを手に持ちどうしようか困惑している感じだ。雑誌が入っているラックのような棚は幸いそんなに高くない。頭をさらに低くして反対側から回れば、ちょうど映見の真正面にいける。
また僕の心臓がドキドキとしてしまう。落ち着け、落ち着け。カメラは手元にある。すぐシャッターを押せる状態だ。
僕は映見の居る場所を何度も確認し、反対側の通路をスタスタスタっと腰を折って走った。
カメラをしっかりと手に持ち顔を上げようとしたとき、ズボンのポケットに入れていたスマホが着信音を鳴らした。
あっと思ったせいでタイミングがずれた。それでも一か八か立ち上がってカメラを向けたその時、映見はすでにこっちを見ていて微笑んでいた。そして僕はシャッターを押した後だった。
「なんだやっぱり作戦だったんだね。そうじゃないかなって思った。でも私もタイミングよくメール送ったもんだ。お陰で助かっちゃった」
僕はスマホを取り出しメールをチェックした。
――本当の答えが分かっていて、今私の近くにいるんでしょ。
全くその通りだった。
棚越しに映見と顔を合わせ、僕は虚しく巻き上げダイアルを回した。
ショッピングモールの場所は分かっているが、ひとくくりにするには範囲が広すぎる。入り口も多数あるし店だって色々と入っている。一体どこに映見が居るというのだろう。
午後一時に待ち合わせしたものの、どこをどう探せばわからなかった。映見が行きそうな店。かわいい小物が売っている場所や、化粧品グッズがあるようなところを覗いたが居ない。端から端を往復するだけでも大変なのに、それが三階まであるんだから店をひとつずつ見て回るのも膨大な作業だ。
その時、僕のスマホからメール受信音が鳴った。もしやと思いすぐ確かめれば映見からだった。
――ヒント。『○の虫』に当てはまる漢字はなんでしょう。私はそこにいます。
『○の虫』でピンと来た。僕はメールをすぐに返す。
――腹の虫!
僕は映見の与えられたヒントの場所を目指す。手にしっかりとカメラを持ちながら。
それは二階の角の広々とした場所に位置し、ちょうどエスカレーターを上ったところにあった。
入り口に差し掛かると僕は辺りを警戒する。拾いオープンスペースには本がたくさん入った棚やディスプレイされた各コーナーが設けられている。それらに身を潜めたら隠れられそうだ。僕は慎重に映見を探した。
今頃映見は困惑しているだろう。○の虫とくればすぐに本の虫を想像する事を期待していたはずだ。
でも僕はわざと間違えて腹の虫と答えた。フードコートと勘違いしているんじゃないかと映見に思わせる。その油断したところを僕はカメラに収める。今度こそできるかもしれない。
忍者になったように、そろりそろりと棚の間を確認する。雑誌のコーナーを覗いたその時、居た! 映見はスマホを手に持ちどうしようか困惑している感じだ。雑誌が入っているラックのような棚は幸いそんなに高くない。頭をさらに低くして反対側から回れば、ちょうど映見の真正面にいける。
また僕の心臓がドキドキとしてしまう。落ち着け、落ち着け。カメラは手元にある。すぐシャッターを押せる状態だ。
僕は映見の居る場所を何度も確認し、反対側の通路をスタスタスタっと腰を折って走った。
カメラをしっかりと手に持ち顔を上げようとしたとき、ズボンのポケットに入れていたスマホが着信音を鳴らした。
あっと思ったせいでタイミングがずれた。それでも一か八か立ち上がってカメラを向けたその時、映見はすでにこっちを見ていて微笑んでいた。そして僕はシャッターを押した後だった。
「なんだやっぱり作戦だったんだね。そうじゃないかなって思った。でも私もタイミングよくメール送ったもんだ。お陰で助かっちゃった」
僕はスマホを取り出しメールをチェックした。
――本当の答えが分かっていて、今私の近くにいるんでしょ。
全くその通りだった。
棚越しに映見と顔を合わせ、僕は虚しく巻き上げダイアルを回した。