着ぐるみ着ていると時間の経つのがあっという間だ。そろそろ映見との待ち合わせの時間だ。
そう思ったとき、映見が駅から多数の人に紛れて現れた。辺りをキョロキョロし僕を探している様子だ。イベント会場にも視線を向け僕の方も見た。でも僕は今ウサギだから映見は気づくことなく、いつもの待ち合わせの場所へと警戒しながら歩いていく。
町興しのイベントの周りは人が集まり、ウサギの僕も子供たちに囲まれている。それが時々気になるのか映見の視線がこっちに向く。
僕はその度にドキッとして、心拍数が上がっていた。
映見が辺りを見回しているとき、僕は神野に合図する。
神野も映見がどこにいるか分かった様子だ。
映見に気づかれないように、僕にカメラを渡しテントの後ろへと隠れた。
カメラを持つ手を後ろに隠しながら、僕はもう片方の手を振って周りに愛想を振りまいて徐々に映見に近寄る。
時々すれ違う子供に自らちょっかい出して道化を演じ、映見に怪しまれないようにする。
回りの人はじろじろと見ていくが、映見はウサギの僕を見ても、あまり感心を持っていない。それよりも建物の影や看板の後ろなどそういうところを気にしていた。
あまり近づきすぎてもいけないし、どの辺りからカメラを向けようかと思案している時、ちょうど下車した人たちがたくさん駅から出てきて、映見はそれに気を取られていた。
チャンスだ。
僕はカメラを構え、その一瞬の隙を捉えようとした。
そのとき、自分の手がもこもこで、肉球の厚みでシャッターが押せないことに気がついた。
焦ったその時、つるりとカメラを落としてしまい、慌てて拾おうとしゃがめば足元が大きな頭でよく見えなくて、知らずと足に当たって蹴ってしまった。
無残にもそれは地面を滑り、気づいた映見はカメラとウサギの気ぐるみを交互に見つめた。
僕がしゃがんだまま動けなくなっている間、映見はカメラを拾って僕の前までやってくる。
「透なの?」
映見は僕の被っていたウサギの頭を掴んで引き上げた。
被りものから開放されると、視界が思いっきり開け、汗をかいた額に空気が触れてひんやりとする。
僕はどんな顔をして映見を見ていたのだろう。映見はウサギの頭を持ったまま愉快とばかりに笑い転げていた。
「まさか気ぐるみでくるなんて思わなかった」
「頭、返して。今、仕事中なんだ」
「仕事?」
僕は簡単に神野から頼まれたアルバイトの事を説明する。映見がイベント会場に視線を向けると、神野がそれに気づいて手を振っていた。
映見は僕にウサギの頭を被せ、僕が立ちあがるのを手伝ってくれた。
僕に付き添い、神野のいるところへと一緒に歩く。
「上手くいったか?」
神野に訊かれ、ウサギの僕は頭を横に振る。
「その気ぐるみの手じゃ、物は掴めてもシャッター押すのが難しそうだな」
「なんでもっと早く言ってくれないんだよ」
「そんなのやってみないとわからないじゃないか」
それもそうだけど、また目先のことばかり考えすぎて確認を怠ってしまった。
そう思ったとき、映見が駅から多数の人に紛れて現れた。辺りをキョロキョロし僕を探している様子だ。イベント会場にも視線を向け僕の方も見た。でも僕は今ウサギだから映見は気づくことなく、いつもの待ち合わせの場所へと警戒しながら歩いていく。
町興しのイベントの周りは人が集まり、ウサギの僕も子供たちに囲まれている。それが時々気になるのか映見の視線がこっちに向く。
僕はその度にドキッとして、心拍数が上がっていた。
映見が辺りを見回しているとき、僕は神野に合図する。
神野も映見がどこにいるか分かった様子だ。
映見に気づかれないように、僕にカメラを渡しテントの後ろへと隠れた。
カメラを持つ手を後ろに隠しながら、僕はもう片方の手を振って周りに愛想を振りまいて徐々に映見に近寄る。
時々すれ違う子供に自らちょっかい出して道化を演じ、映見に怪しまれないようにする。
回りの人はじろじろと見ていくが、映見はウサギの僕を見ても、あまり感心を持っていない。それよりも建物の影や看板の後ろなどそういうところを気にしていた。
あまり近づきすぎてもいけないし、どの辺りからカメラを向けようかと思案している時、ちょうど下車した人たちがたくさん駅から出てきて、映見はそれに気を取られていた。
チャンスだ。
僕はカメラを構え、その一瞬の隙を捉えようとした。
そのとき、自分の手がもこもこで、肉球の厚みでシャッターが押せないことに気がついた。
焦ったその時、つるりとカメラを落としてしまい、慌てて拾おうとしゃがめば足元が大きな頭でよく見えなくて、知らずと足に当たって蹴ってしまった。
無残にもそれは地面を滑り、気づいた映見はカメラとウサギの気ぐるみを交互に見つめた。
僕がしゃがんだまま動けなくなっている間、映見はカメラを拾って僕の前までやってくる。
「透なの?」
映見は僕の被っていたウサギの頭を掴んで引き上げた。
被りものから開放されると、視界が思いっきり開け、汗をかいた額に空気が触れてひんやりとする。
僕はどんな顔をして映見を見ていたのだろう。映見はウサギの頭を持ったまま愉快とばかりに笑い転げていた。
「まさか気ぐるみでくるなんて思わなかった」
「頭、返して。今、仕事中なんだ」
「仕事?」
僕は簡単に神野から頼まれたアルバイトの事を説明する。映見がイベント会場に視線を向けると、神野がそれに気づいて手を振っていた。
映見は僕にウサギの頭を被せ、僕が立ちあがるのを手伝ってくれた。
僕に付き添い、神野のいるところへと一緒に歩く。
「上手くいったか?」
神野に訊かれ、ウサギの僕は頭を横に振る。
「その気ぐるみの手じゃ、物は掴めてもシャッター押すのが難しそうだな」
「なんでもっと早く言ってくれないんだよ」
「そんなのやってみないとわからないじゃないか」
それもそうだけど、また目先のことばかり考えすぎて確認を怠ってしまった。