矛盾している。

 一方的に言われても、僕は戸惑うばかりだった。だけど強くそれを拒否できない僕は、ズルズルと映見とこんな事をする羽目になってしまった。

 僕がいい加減な奴ならどれだけよかっただろう。人に言い寄られたりすると変なところで真面目に相手をしてしまう。映見はエキセントリックな女の子だけども、その個性が彼女らしくて特別なものとして僕の目に映っていた。

 僕は昔から人が持つ特殊な個性を好意的に見てしまう癖がある。一般的にそれが人から受け入られないものであっても、僕の目からみれば長所に見えるのだ。

 太っていた和香ちゃんも、埴輪に似ていた郁海ちゃんも、八の字の眉をしていた未可子さんも、そういう個性的な彼女たちの部分が大好きだった。

 だから多少変な人を目の前にしても僕はあまり動じない。それが僕のいいところでもあり、やっかいなところでもあるのだろう。

 でも悠長な事を言ってられない。これはかなりまずい。一刻も早く映見から離れなければ、万が一法則が働いてしまったら取り返しのつかないことになる。

「それじゃ、僕はこれで帰る。シャッターを切れば、もうそれで君と一緒にいる必要はない。そうだろ?」

 急に冷たくなった僕の態度に映見は戸惑うも、またにこっと微笑みを返してきた。

「うん、そうだね。暗くなってきたし、お腹も空いてきたし、今日はこれぐらいにしといてあげよう」

 映見もえらそうな態度をとってきた。

 映見はまた強気に「はっはははー」と笑って水戸黄門のテーマソングを歌いながら去っていった。

 僕はそれを黙って見送った。

 僕も歩き出せば、街中のショーウインドウに自分の姿が移りこんでいるのが見えた。黒の学ラン。 そうだ制服のままだった。こんな格好してたら夜の暗闇以外目立ちすぎだ。学ランを目印にすれば、いつだって気づかれてしまう。

 まだ二十六枚残っていても何か対策を考えないと、そう簡単に映見に気づかれないで写真が撮れそうもないような気がしてきた。

 どうすればいいのか、思案しながら考えている時、スマートフォンからメール着信の音が聞こえた。早速チェックする。


 ――明日、24日、学校が終わったら今日と同じように駅で待ってる。


 学校の帰りだからそれほど場所に変化がない様子だ。今日の失敗を教訓に少し作戦を立てた方がいいかもしれない。

 僕はどうすればいいのか考えながら家路についた。