「私を撮る時は、必ず私が撮られているのを知らない時。そしてシャッターチャンスは一日に一度だけ」

「えっ? それって隠し撮りってこと?」

「そういうこと」

「そんなの簡単じゃないか。君に気づかれないように、後ろからパシャリとすればいいだけだ」

 映見は首を横に振った。

「それはダメ。必ず私だと分かるように顔がはっきり見えることも条件のうち。また遠い場所から小さく写したものもだめ。必ず顔を中心に私を撮ること」

 僕はそれを聞いて少し離れた場所からファインダー越しに彼女を見てみた。三メートルほどはなれてしまうと、ズームができなくて被写体が随分小さくなってしまう。

「これかなり近くに居ないと、君のいうように撮れないじゃないか。そんな近くから君に気づかれないように撮れるんだろうか」

「それはやってみないとわからないんじゃない? それが成功したら透は私から解放される」

 僕は手の中のカメラに視線を落とした。

「本当に気づかれないように君を撮れば、僕を放ってくれるんだろうな」

「約束するわ」

 映見と離れるのならやるしかない。僕は一刻も早く関わりを絶たなければならない。その思いから僕は首を縦に振り承諾していた。

「二十七枚だから、二十七日間、毎日一枚のシャッターチャンスってことか。でもどうやって毎日君に会えばいいんだい?」

「それはちゃんと連絡する」

 映見はスマホを取り出し、僕にもそれを出せと催促する。僕たちはお互いの連絡先を交換し合った。

「私が必ず前の日にメールで簡単にお知らせを送る。平日はお互い学校があるから、朝の通学か帰りの放課後になってしまうね。でも土日や祝日はチャンスをあげようではないか」

「どんなチャンスだよ」

「一緒にどこか行くとか、一日中私と過ごすの。ふふふ」

 一緒に居たら僕が居ると気づかれて余計にチャンスがないじゃないか。いつ気がつかれないように撮ればいいのだろう。

 この時僕はまだ写真を撮るということにピンときていなかった。とにかく二十七枚もあれば一枚くらい撮れるんじゃないかと軽く考えていた。だけどもし一枚も映見のいう条件の写真を撮れなかったらどうなるのだろう。

 僕が頭で考えをめぐらしていた時、映見は言った。

「今、失敗するかもなんて考えてたりして」

 図星だ。

「まさか、絶対気づかれないで撮ってみせるよ。結構、僕、自然な姿を写真に写すのがうまいんだから」

 全くのでまかせだ。虚勢を張ってどうするのか、言ってしまった後では取り消しなんてできなかった。

 もし失敗したら映見は僕にどこまでも付きまとってくるに違いない。やるしかないじゃないか。

「それじゃ、開始日はこちらから連絡する。必ず、一日に一枚、二十七日間毎日だからね」

 映見に強く言われて、僕はカメラを握る手に力が入っていた。

 こんなやり取りがあった後、早速映見からメールが入ることになる。