放課後、神野にも一緒に来てほしいと頼んだが、用事があるといってさっさと帰っていった。今まであんなに僕につきまとったというのに、僕がようやく心開けばさっさと見放された。なんだか一抹の寂しさを感じてしまう。構ってほしくなかったくせに僕もどうかと思うけど。

 悶々とした気持ちを抱え、僕は早足に駅に向かった。もしかしたら時生映見が僕を待ってるかもしれない。返してと書いていたのだから、僕はまた会えそうな気持ちを確信していた。

 駅に着くまでどんな顔だったか思い出そうとしてると、髪の長い女の子を見る度に時生映見に見えてしまう。ずっと女の子なんて見てなかったから、ふいに目が合う度に僕は胸の鼓動がドキッと跳ね上がった。

 だから駅について、朝見たのと同じ顔がそこにあったとき、僕の心臓は益々ドキドキしだした。彼女がまさに僕を待っているように駅の前で立ってたからだ。

 お嬢様学校と呼ばれるところの制服はデザインが洗練されていた。白い襟がアクセントのグレーのワンピース。腰にベルトをしてキュッとしまっている。制服というよりも余所行きのフォーマルな服装に見えた。白いソックスにつややかな黒いローファーもいい感じに決まっている。きっちりとした身なりが清楚でさすがお嬢様と呼ばれるに相応しい姿だった。

 今までまじまじと見た事がなかった僕は、急にその制服に圧倒されてモジモジしてしまう。さっきまでは手紙を叩き返そうと思っていたのに、華やかにすらっと佇んでいるその姿を目の前にしてすでに怖じ気ついていた。

 彼女も僕がやってきたことに気がつき、気まずそうに僕を見たり俯いたりとそわそわしだす。

 僕は間違った事をしているようで急に帰りたくなってしまった。でも今更遅かった。彼女も僕に近づいてきた。

「写真、見てくれた?」

 時生映見の方から声を掛けてきた。

 僕は肩にかけていた鞄からその手紙を取り出し、何も言わずに差し出した。

 それを受け取り、彼女はにっこりと微笑んだ。

「かわいかったでしょ。犬も笑うんだよ」

「これ、なんの真似だ?」

「気に入らなかった?」

「だから、なんでこんな事をしたのかって訊いてるんだ」

 強く言ったつもりはなかったけど、笑わない僕の無愛想な顔が怒ってると思ったのか、彼女は混乱し今にも泣き出しそうになっている。

 それを見た僕もそういうつもりじゃないとおどおどしてしまう。周りにいた他の学生たちも僕たちの異様な雰囲気を感知し、すれ違いざまにじろじろと見て気にしていた。

 僕は一体何をしているんだろう。女の子を虐めているのだろうか。動揺しすぎてまるで異次元の中に飛び込んだみたいで急にクラクラしてくる。僕は軽くパニックに陥ってしまった。

「大丈夫?」

 反対に僕が声を掛けられた。

 そして袖を引っ張られ、気がついたらその辺にあったベンチに座らされていた。

 暫くぼうっと座っていると彼女が話し出した。