こんな時まで私の心配をするのね……。
私は、涙を流しながら理由を話した。
家族のこと、私が盗みをするようになったこと
全てを打ち明けた。
「そうだったの……」
「だって……羨ましかったから
1つぐらい私にくれてもいいじゃない!?
私に……くれても」
それがいけないことだなんて十分に分かっている。
犯罪だって……。
でも盗むしかなかった。生きて行くために。
私には、何もないから……。
これは、嫉妬。この家庭が羨ましかった。
だから少しでも手に入れることで奪いたかった。
でも、ターゲットを変えれなかったのは、
この家があまりにも居心地が良かったから。
だから離れることが出来なかった……。
情けなさと悔しさで心が押し潰されそうだった。
するとお婆さんは、優しく私の肩をポンッと
叩いた。そして抱き締めてくれた。
えっ……?
突然抱き締められたので頭が混乱する。
「そっか……辛かったわね。でも
これは、犯罪だからもう二度とやったらダメ。
絶対に……いい?香澄ちゃん」
微かに残る化粧の匂い。
そしてあたたかいぬくもりが余計に
私の気持ちが揺らぎ隠していた感情が溢れだしてきた。
涙が止まらなくなった。
「許して……くれるんですか?」
「当然よ。あなたが本当は、いい子なのは、
私がよく知っているから。
だから罪を改めて人生をやり直してちょうだい。
私は、待っているから……あなたが帰って来るまで」
他人の私を受け入れてくれた。
ずっと欲しかった言葉をくれた。
その優しさに私は、涙がさらに溢れ止まらなかった。
その後。私は、お婆さんに付き添ってもらい
罪を償うため自首をした。そして気づかされた。
私は、1番欲しかったモノ、金属でもお金でもない。
愛情が欲しかったことに。
やっと手に入れた……。
END。