「そうだ、名前、付けてやるよ」

 伊野の言葉に、少女は目を丸くした。

相変わらずハの字眉毛で心配そうではあるものの、どこか納得した面持ちと、取れなくもない。

「名前を教えてくれなかったらお前は誰にでも名前を付けるのか」


渥美のため息をよそに、伊野は得意げに頷く。


「ニコルだ」


 ・ ・ ・


「なんで外人?」
「だって外人じゃんさ」
「何を思ってニコル?誰?」
「ニコチンって人間には必須な栄養素なんだよな」
「必須な栄養素じゃねーし
 ニコチンとニコルはなんの脈絡もないだろ!」


良くない教育だ、だの教育がなってないだの。結局は同じ言い回しを叫ばれ、人間失格は、耳に小指を突き立てる。

そしてその瞬間は、突然に。



「にこる」



 起こった。


「………喋った」

「伊野」
「喋った、」
「伊野ニコル」
「あ、そういう感じで行く?」

まあいいんだけどね、
気に入ってくれたなら。

そう言った人間失格は、人間なりに、人間らしい感情を「若干」抱いた。

「おまえがこの子を引き取るんだな?」

「え、何それ」
「なついてるからしゃあないな」
「え、一人でも家計は火の車」
「ニコル、伊野引き取る」

「引き取られんのはお前だろ」


あくまで、「若干」。


はてさてよくわからない成り行きで金髪美少女ニコルと同居生活を送るハメになってしまった人間失格伊野(26)

果たして彼の運命はどうなるんだかどうにもならないんだか、


答は神すらも謎




→To Next.