「で、その例の女子高生は?」
「保護されたよ。警察署でな
あの歳の女子って結構情緒不安定だからなあ
家出とかのエスカレートだったんじゃない」
金髪美少女の家出とか、
且つその逃げ場にあのおんぼろアパートが選ばれるとは
半ば奇跡に近いよと。
世紀の弁護士が言うのも変な話だと思うけれどと伊野は思う。
「でも謎は鍵つきのアパートの一室にどうやって侵入したかだよな」
「なんか針金で開くらしいよ俺ん家」
「おいなんだそれはじめて聞いたぞ」
しかも家主である主人がその事実を知らないで大家に知らされてようやく知ると言う事態。
「鍵壊れてるのわかってたけどまた付けるの金いるし、金ないし、付けたら付けたで俺の生存が曖昧になるからという櫨山さんの粋な計らい」
「粋じゃねーよ全く。
老い先短い自分より年上の爺さんに生存心配されてどうする」
確かにそうね、と曖昧な返事を返すと、人間失格、もとい伊野は、吸いきった煙草を名残惜しむと、その吸い殻を渥美が差し出した携帯灰皿の中に捨てた。
「とりあえず、おまえは鍵をつけろ。
金は貸してやるから」
「マジで?でも返すアテがないよ」
「いや、働け。
金に関しては今に始まったことじゃないしな
いくら金無いとはいえいざって時に何かあったらどうする」
「うちにあるのはパンツTシャツ塩、砂糖くらいだから平気だよ」
「だから何に対する“平気”発言なんだそれは…」