「いやー、やっぱり持つべき物は弁護士の友人だわ」
煙草を吹かしながら、伊野はまったりと言う。
その隣にいるのは、TVや雑誌にも取り上げられるほどの人気を博す、【世紀の弁護士】こと渥美功太郎である。
若くして数多くの法廷で確かな実績を積み重ねてきた彼は日夜引っ張りだこであり、その所行により勝ち得た信頼・そして期待は未だ誰もが目にしたことのない敗訴と、勝訴の数に等しい。
「これっきりにしてくれ」
「そう言う度俺が懲りないのわかってんだろうに」
「本人に自覚が足りないからこういうことが起こるんだ」
お決まりの文句ののち、
お決まりの渥美のくどい説教を聞き流しながら、片や伊野は、新しい煙草を久々に吸ったことに感動していた。
「長い煙草ってのを久々に吸った」
「お前普段どんな生活してるんだ。どーせまた吸い殻くわえて寝てるんだろ」
「意外とあれも乙だよ」
「それはお疲れのオツの間違いだろ」
毎回毎回金だけせびりやがって貢いでるおれはお前の何だ彼氏か旦那か金融機関か。
少なくとも前者2つは違うわな、とか会話を交わしたら、張りつめた糸が一気に緩まるような感覚を。
人間失格も、人間なりには緊張していたのかと、喫茶店のソファにまたしてもうなだれてぼんやりと考えてみた。
「で?アパートの一室になぜずぶ濡れの女子高生がいたのか、だ」
「女子高生だけなら未だしも、ずぶ濡れでしかも外人ときた」
「夜遊びじゃねぇの?」
「興味ないって」
女とか男とか、ろくすっぽ。