枯れ葉は新聞紙を火種に燃え移り、パチパチと音を立てて赤い炎が上がる。
時期に金髪の少女が走って来て、その中に雑誌を放り投げた。
僕はぼんやりとそれを見る。
パチパチ音を立てて燃える新聞紙
僕はぼんやりとそれを見る
パチパチ音を立てて燃える雑誌
僕はぼんやりとそれを見る
パチパチと音を立てて燃える医学書
僕はぼんやりとそれを見る。
ぼんやりと………
赤く燃える 医学書 を
ぼんやりと…ぼんや………
「って ええええええ!!!?」
医学書!?なんで医学書!!
よく見れば医学書だけじゃない、他の、僕が勉強に使っていた教材が火中で今にも炎を増して燃えているではないか。
「これ…!どっから持ってきた!!?」
「え…いや、家の前に紐でくくっといたいらない雑誌のハズだけど」
「違う!これは紐でくくってない!僕の勉強道具だ!」
「え」
そうだ思い出した。今朝、新聞を取りに外に出てから部屋を一掃するべく、机上に置いていた本棚に収まりきらない参考書の数々を一度玄関の外に出したのだ。
掃除が終わってからすぐ入れようとその予定で、しかし大家さんに呼び止められてからてっきり直したつもりで忘れてしまっていた。
「………っどうするんだよ…コレがないと医学部受験なんて夢のまた夢……っ参考書代賄うにしたって…ゼミ代もバカにならないのに……っ」
思わず膝から崩れ落ちる僕の、その隣で真っ青になった少女が視界の隅に見えた。
すると、少しの間を開けて白い手が火中に伸びようとする。
「ばか、ニコル」
やめなさい。
顔を上げて見たら、この短時間でどれだけ流したのだと疑うほど涙で顔面水浸しにした少女と、その白い手を鷲掴む伊野さんの、
見たことない真剣な表情があった。