「ユースケ先輩はまず酒と煙草とパチンコやめた方がいーな」
「酒と煙草とパチンコを取ったら俺には何も残らない」
「悪だな~」
「それほどでも~」
「恥を知れ、恥を」
渥美による一蹴をくらい六畳一間の畳にひれ伏す伊野。
それを焦ってニコルが揺さぶるが、彼女もまた渥美の差し出した「紙袋」によってはね除けられた。
「?」
「これはニコルにだ。
一文無しで伊野の部屋に来た分、着替えとか無いだろうと思ってある程度集めてきた」
「先輩そっちの趣味がおありだったんすか」
「ねーよ。最近仕事でつるんだ人が話を聞いてお礼も兼ねてってくれたんだ
普段そういうの断るんだけど確かに必要だなと思って」
開けてもいい、と言わんばかりに目を輝かせるニコルに渥美は「どーぞ」と促すと、
彼女は直ぐ様押し入れに入ってしまった。
「え、なぜに押し入れ」
「部屋が無いからさぁ、空っぽの押し入れで昨日寝てもらったんだ」
「ドラ●えもん!?」
「伏せ字の意味」
確かに年頃(若干一名除く)の男女が住むには部屋の数も壺も足りないこのアパートだが、
だからと言って押し入れに片割れが寝る仕組みはそうないと思われる。
「そいやオレも知り合いに女心には人一倍敏感なのがいるんスよ。彼にも話して服もらって来ます」
「…ちょっと待て聞き捨てならなかったんだが“女心人一倍敏感な「彼」”ってなんだ、男なのか」
ニューハーフッスね。
悪びれる素振り皆無で微笑む後輩。
引き攣る弁護士。
「まあね、でも女より女心確かにわかるよなそれは」
マイペースなフリーター、
その背中を蹴りとばす弁護士。