「よくよく見ても不細工だなァ」



無造作に整えられた茶髪に、女子受けの良さそうな均等にバランスの取れた中性的な顔立ち。

リクルートスーツを程よく着崩した他二人より若干見目にあどけなさを感じさせる青二才・曰比谷は、

美少女ニコルを見るなり残念気にボヤいた。


「………!」

「おまえ最悪なこと平気で言うな」
「相変わらず毒舌」

傷付いてるよニコル傷付いてるよ。

「まあ曰比谷はブス専だからしゃあないか」
「いや、だから彼女可愛くないって…」
「…やっぱりこいつに運搬頼んだのが間違いだったな」

青二才より高級かつ、事実値の張るスーツを身に纏う弁護士・渥美は、やれやれと肩をすくめた。


「ひっでー。そりゃないでしょ、渥美先輩が言うから忙しい仕事の合間縫ってトラック運転してきたってのに」
「その道中レンタルの車空き地の柵に突っ込んだのどこのどいつだ」
「あれは空き地の場所が悪い」

加害者ってのは自分に都合の悪い事象は伏せて不平不満だけぼやくんだ、と嘆く世紀の弁護士(あつみ)の言葉には、法廷で数多くの人間を見てきただけにそれなりの信憑性が見込める。

それとは裏腹に、六畳一間に運ばれた段ボールの山をしげしげと眺めていた伊野は不思議そうに振り返った。


「つーかなぜ荷物配達?引越しでもしたの、
俺」

「男女が二人で住むにはお前ん家は何も無さすぎる」
「TVもないしエアコンもないスよね」
「だって必要ないだろ別に」
「必要だろ。生きていく上で取れる食事が塩と砂糖だけってのも大問題だからな」


日曜日でも無いのに昼間から黒のスウェットに白の薄いロングTシャツを纏っただけのボサボサ頭の色白に向かって

社会人二人は上から制圧も兼ねてとことん蔑みの目線を送った。