恥の多い生涯を送って来ました。
自分には、人間の生活というものが、
見当つかないのです。
太宰治「人間失格」冒頭より
───高校時代にはじめてこの小説を読んだ時、まず思ったことがある
「誰だよ許可なく俺のこと書いたやつ」
あれから、8年。
かの人間失格は、呆然と佇んでいた。理由はただ一つに尽きる
「……あんた、誰?」
人間失格の住まう隠れ家家賃二万のおんぼろアパート
その一室に突如として現れた一人の少女は
青いセーラー服を着た
金髪に、碧眼の出で立ちで
雨も降っていないのにずぶ濡れになり六畳一間のど真ん中に座り込んでいた。
「……外人?」
人間失格は英語がうろ覚えのため
ガラにもなくヤバいと思う
「……映画?」
同時に朝確かに鍵を閉めたアパートの一室
しかも数ある中でなぜ自分の家へと訝り
ようやく
「警察、」
スウェットのポケットから携帯を取り出してボタンを押す前に、世界が反転した。
少女だった。びしょ濡れの彼女が足にまとわりついてぶるぶる首を振っている。
いかがわしい写真集にも濡れたセーラー服の少女が必ず1ページあるように
こんな状態で万が一誰かがふいに訪ねてきたら、絶対的な不利に陥───
「伊野さーん回覧板です、よ……」
大家の櫨山さんが人間失格の家の扉を開けて、回覧板を落とすまで5秒前
少女拉致監禁の疑いで警察に突き出されるまで3秒前
少女が人間失格に魅入るまで────────
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