私は驚いて聞き返した。

「本当。だって、二年女子の障害物競争って書いてあるもん。で、その後は暫く出番なしで、最後がクラス対抗リレー」

 夏帆ちゃんが優衣ちゃんの持っているプログラムを指さす。そこには確かに『二年女子 障害物競争』と書かれていた。

「午後も大盛り上がりだね。楽しみ!」

 両手を上に伸ばした夏帆ちゃんはうーんと伸びをしてにかっと笑う。校庭に目を向けると、入場ゲートの辺りに楽器を手にしたブラスバンドのメンバーが隊列を組んで並んでいるのが見えた。


 私も出場する障害物競争は、二年生の女子全員で行われる。
 スタート待機の場所に座った私達は、先に走り出した同級生達に声援を送りながらその様子を眺めた。ざっと見た限り、最初から縄跳び、ネットくぐり、跳び箱、バスケットボールドリブル、ハードル、最後は駆け抜けてゴールとなるようだ。全部で五レーンあり、A組からE組までの五人が同時に走る。

 よし! がんばろう!

 お腹の近くでこっそりと拳を握ってガッツポーズを取り、気合を入れる。私は少しばかりどんくさいところがあるけれど、障害物競争ならそこまで問題にならない気がする。

 前列の五人がスタートすると、体育祭実行委員にスタートラインに進むように促された。白い石灰でマーキングされたスタートラインでダッシュのポーズを取る。

 ──シュパーン!

 先生が発砲音用ピストルを上に向けて撃つと、独特の音が鳴り響く。

 それと同時に、横並びの五人が走り出す。私も最初の障害である縄跳びに向かって走った。陸上トラックの地面に転がる縄跳びを手に取ると、普通飛びを五回。終わるとすぐにまた走り出す。
 三メートルほどのネットを潜り抜け、六段の跳び箱を飛ぶ。
思ったより、ずっといい感じ。
バスケットボールを手に五回ドリブルをすると、そのボールを転がらないようにボール置き用の段ボールに置いた。

「雫ちゃーん! 頑張れー!!」
「雫ちゃーん」
 
 既に走り終わったクラスメイト達が応援してくれている声援が聞こえた。あとはハードルを三つ超えるだけだ。
 前には一人だけ。ここで追い越したら、一位になれるかもしれない。

 すうっと息を吸うと、一つ目のハードルを飛び越える。難なく着地して二つ目。一位のC組の子との差は一メートル位だ。