松本くんはサッカー部のエースだけあって足が速い。彼氏を褒められて嬉しそうに笑う夏帆ちゃんに、私は相槌を打つ。そう言えば、侑希も昨年、クラス対抗リレーの選手に選ばれていたな、なんてことも思い出した。 

    ◇ ◇ ◇

 燦々と照りつける太陽に、思わず目を細める。
 日差しを遮るように手で傘を作り額に添えると、眩しさは少し和らいだ。少し顔を上げると、雲一つない真っ青な青空がどこまでも続いている。今日は、絶好の体育祭日和だ。

「今日、暑いねー。まだ五月なのに」

 隣にいる夏帆ちゃんと優衣ちゃん、それに美紀ちゃんがパタパタと体操着を扇ぐ。天気予報では、今日の最高気温は二十七度まで上がるそうだ。まだ午前中だというのに、ひなたにいると汗が吹き出てくるような暑さだった。

 一、二、三の掛け声に合わせて、屈伸やジャンプなどをする全校生徒の体操から始まった体育祭は、昼近くになっていよいよ最高潮の盛り上がりになっていた。
 競技を行う校庭の周りには生徒用の席もあるが、それとは別に応援用スペースも確保されていた。なので、生徒達はプログラムを見ながら思い思いに移動して応援を行っている。

「私、そろそろブラスバンドの準備に行った方がいいかも」

 お昼ご飯を食べていると、プログラムを見ながら一緒にお弁当を食べていた美紀ちゃんが時計を確認する。
 ちょうどそのとき、体育祭実行委員会の事務局によるブラスバンド参加者の集合場所への集合を告げるアナウンスが流れた。

「お。頑張ってね!」
「うん!」

 立ち上がって手を振る美紀ちゃんを見送り、私達は再びプログラムに視線を落とした。  

「午後のプログラムって、この次がブラスバンドで、その後はなんだろう?」と私が呟くと、
「二年男子の棒倒し」と優衣ちゃんが即答する。
「あー! 毎年盛り上がるやつだ!」

 指でプログラムを追いながら確認する優衣ちゃんの一言に、夏帆ちゃんが叫ぶ。

 男子の棒倒しはその名の通り、相手のチームの棒を先に倒したチームが勝ちというシンプルな競技だ。ただ、その棒の前に見方の守りがいたりするので、皆手に汗握って勝敗がつくまでに大いに盛り上がる。

「その次が一年の綱引きで、その後はうちらの出番だね!」

 優衣ちゃんはプログラムをなぞりながら、そう言った。

「え、本当? そんなにすぐ出番だっけ?」