抹茶白玉は、小さなプラスチック製のプリンカップのような器に抹茶ゼリー白玉、あんこが盛られていた。
「じゃあ、私もこれにしようかな」
「店の前で食べていく?」
「はい」
「じゃあ、お茶はサービスするわね」
おばさんはにこにこしながらショーケースから二つ抹茶白玉を取り出すと、それをお盆に乗せた。そして、湯呑みにあつあつのお茶を二杯淹れてくれた。
初めて食べる風来堂の抹茶白玉は、あんこの甘さと抹茶の苦みが絶妙に混じり合い、絶品だった。そこに、白玉のもちもちした触感がいいアクセントとして効いている。
「美味しい」
「うん」
お店の前に置かれた、赤い布がかかったベンチに二人で腰かけて頂く。時々吹く弱い風が、頬を優しく撫でた。
「侑くん、時々ここに来るの」
「うん」
「二つって、誰と食べているの?」
侑希の家は、四人家族だ。両親と、侑希と、小学五年生の妹。だから、さっき『二つ買う』と聞いて不思議に思ったのだ。侑希は答える代わりに、困ったようにこちらを見つめ返す。
「わかった。女の子と食べているんでしょ?」
ちょっとした悪戯心でそう言った瞬間、侑希がふいっと視線を逸らす。
冗談で言ったつもりだったのに、思わぬ侑希の反応に驚いた。
あ、本当に女の子と食べているんだ。
すぐにそう思った。私に『女の勘』なんて大それたものはないけれど、明らかにこれ以上は突っ込んでほしくなさそうな態度の侑希に、急激に胸のうちにもやもやが広がるのを感じる。
その相手は、いつも嬉しそうに話す例の『好きな子』なのかな、なんて思ったり。もちろん、自分がそのことをとやかく言う立場でないことはわかっているけれど、なぜだろう、気持ちが落ち込む。
「雫? あんまり好きじゃなかった?」
急に黙り込んだ私を見つめ、侑希が心配そうに顔を覗き込む。
「ううん、凄く美味しいよ。ありがとう」
私は慌てて表情を取り繕うと、笑顔でそう言った。自分でもなぜこんなにもやもやするのかがわからない。
「春休みだけどさ、部活と塾があるからあんまり時間がないんだけど、もしわからなくて困ったところがあったら言って。夜なら時間が取れると思う」
「うん」
「じゃあ、私もこれにしようかな」
「店の前で食べていく?」
「はい」
「じゃあ、お茶はサービスするわね」
おばさんはにこにこしながらショーケースから二つ抹茶白玉を取り出すと、それをお盆に乗せた。そして、湯呑みにあつあつのお茶を二杯淹れてくれた。
初めて食べる風来堂の抹茶白玉は、あんこの甘さと抹茶の苦みが絶妙に混じり合い、絶品だった。そこに、白玉のもちもちした触感がいいアクセントとして効いている。
「美味しい」
「うん」
お店の前に置かれた、赤い布がかかったベンチに二人で腰かけて頂く。時々吹く弱い風が、頬を優しく撫でた。
「侑くん、時々ここに来るの」
「うん」
「二つって、誰と食べているの?」
侑希の家は、四人家族だ。両親と、侑希と、小学五年生の妹。だから、さっき『二つ買う』と聞いて不思議に思ったのだ。侑希は答える代わりに、困ったようにこちらを見つめ返す。
「わかった。女の子と食べているんでしょ?」
ちょっとした悪戯心でそう言った瞬間、侑希がふいっと視線を逸らす。
冗談で言ったつもりだったのに、思わぬ侑希の反応に驚いた。
あ、本当に女の子と食べているんだ。
すぐにそう思った。私に『女の勘』なんて大それたものはないけれど、明らかにこれ以上は突っ込んでほしくなさそうな態度の侑希に、急激に胸のうちにもやもやが広がるのを感じる。
その相手は、いつも嬉しそうに話す例の『好きな子』なのかな、なんて思ったり。もちろん、自分がそのことをとやかく言う立場でないことはわかっているけれど、なぜだろう、気持ちが落ち込む。
「雫? あんまり好きじゃなかった?」
急に黙り込んだ私を見つめ、侑希が心配そうに顔を覗き込む。
「ううん、凄く美味しいよ。ありがとう」
私は慌てて表情を取り繕うと、笑顔でそう言った。自分でもなぜこんなにもやもやするのかがわからない。
「春休みだけどさ、部活と塾があるからあんまり時間がないんだけど、もしわからなくて困ったところがあったら言って。夜なら時間が取れると思う」
「うん」