私はトリュフとクッキーとミニケーキをそれぞれ別々にラッピングして、最後に少し大きめの箱に一緒にいれた。飾り用の紙を細く切った緩衝材を入れると、二つ作ったそれらは両方ともそれなりに可愛らしくまとまった。
 一つは父親に、もう一つはいつも勉強を教えてくれる侑希に渡すつもりだ。

 周りの部員が作っているものを見渡すと、思い思いにラッピングしたそれらはどれもとても可愛らしく仕上がっていた。
 
「終わったー。上手にできた方を塾の先生にあげよっと」

 優衣ちゃんは作業をしている手を止めると、にまっと笑う。
 優衣ちゃんの通っている個別指導塾では近隣の大学のアルバイトの学生が先生をしており、今の先生は大学一年生の新米先生らしい。テニスサークルに入っており、爽やかなイケメンなのだと教えてくれた。

「雫ちゃんは、好きな人にあげるの?」

 にこにこしながら聞いてくる優衣ちゃんの言葉に、なぜかドキッとした。

「ち、違うよ。お父さんと……いつもお世話になっている人。勉強を教えてもらっているの」
「ふーん。じゃあ、私と一緒だね」

 優衣ちゃんはそれ以上話を突っ込んでくることもなく、トリュフが乗せられたバットに手を伸ばした。

「先輩が言っていたんだけどね、毎年、男子が完成品狙って外で待ち構えているらしいよ。それはトリュフ一つにしよう」

 優衣ちゃんはそう言いながら、余っているトリュフを一個ずつキャンディーのように包み、端に置いた。私も真似して、同じようにキャンディー型のトリュフを用意した。

「チョコレート何個貰ったかで勝負しているらしいよ。バカだよねー」

 五個ほどトリュフを包んだ優衣ちゃんは、呆れたように笑った。

 部活が終わった後、クッキング部を出ると普段は誰もいない廊下に、男子生徒が何人も待ち構えていた。勝負のためとはいえ、本当に待ち構えていることに、ちょっとびっくり。

「チョコちょうだい」
「はいはい」

 同じクラスの男子からそう言われた優衣ちゃんは、トリュフの包みを一つ手渡す。私も手を差し出されたので、同じように一粒差し出した。

 教室に戻ると、明かりがついていた。誰だろうとそっと覗くと、いつかと同じ光景。クラスメイトの久保田彰人が一人で机に向かっていた。

「久保田くん、どうしたの?」