町に溢れるリア充爆発しろ! とか、そういう理由で嫌いなのではない。相手が本気だったときにどう反応すればいいのかがわからないから、そして、本当に欲しい子からはいつも貰えないから嫌いなのだ。

 学校に着くと、さっそく始まる報告会。
「俺、二つゲットした。妹と、母親」と正直な報告をしたのは健太。
「俺も今のところ二つ。けど、俺の勝ちだな。この後、夏帆から本命を貰える。それに、今日は部活があるからマネージャー一同から一つは貰えるはずだ」と少し得意げなのは聡。
「俺三つ。女子から二つに、朝コンビニ行ったら男性にはサービスしておりますってチロルチョコ貰ったから。それに、俺も放課後彼女と約束しているから確実にもう一つ貰える」

 そう言ってニヤッと笑ったのは、結構モテる友人、笹島海斗(ささじまかいと)。

「まじか!? くっそ、どこだよそのコンビニ? いや、でもまだわかんないだろ? 俺も放課後にバスケ部のマネージャーから貰えるはずだ! なあ、侑希?」
「え? ……ああ」
 
 隣で朝から何個のチョコレートを貰ったかを競い合っている友人達に、俺は気の抜けた返事をした。
ぼんやりとしていた俺を見つめ、友人達は怪訝な顔をする。

「お前、圧倒的な勝者だからって余裕見せすぎだ!」

 健太が不貞腐れたように突っかかってくる。毎年のことなので、俺は「そんなことないって」と軽くあしらった。
 机の横に引っ掛けた紙袋には、すでに三つのチョコレートが入っている。義理チョコだと言って渡してくる子のものはありがたく受け取っているけれど、問題は本気で告白してくる子だ。今年はいなければいいけれど、と切に願う。これまでは、そういう子には『彼女がいるから』と断っていた。

 あんなこと、言わなきゃよかった。

 自分がついた嘘に、落ち込む。雫は、ずっと俺にラブラブな彼女がいたと思っている。そして、今もどこかの誰か──雫じゃない女の子を好きなのだと思っている。
 本当に、最悪だ。あんな嘘さえつかなければ、とっくのとうにこの気持ちを伝えられていたかもしれないのに。

 実は今朝、玄関の前で雫に会った。「おはよう」と会話を交わしてからそわそわしながら待っていたけれど、結果は何もなし。義理でもいいから何か貰えるかな、という淡い期待は泡と消えた。 
 
 最近、雫とはだいぶいい関係だと思う。