年が明けると始まるのが初売りセールだ。
一月二日の初売りセール初日となるこの日、私はクラスメイトの夏帆ちゃんに誘われて大型ショッピングモールへと向かった。十時開店の十五分前にショッピングモールに到着すると、複数あるショッピングモールへの入り口には既に数十メートルほどの長い列ができていた。
「うわぁ、開店前なのに結構並んでいるね」
「福袋目的の人は、早く来ないと売り切れちゃうからね」
驚く私に対し、夏帆ちゃんは落ち着いている。何度か初売りセールに来たことがあるのかもしれない。
列に並んでいると、ショッピングモールの係りのおじさんがセールの案内チラシを配ってくれた。
フロア別にショップ名が並び、その横に『五千円福袋 スタッフおすすめ、あったか冬グッツ』など、目玉となる商品が羅列されている。
夏帆ちゃんは真剣にそれを見て、女子高生に人気のアパレルショップに手持ちのペンで印をつけていく。今日の目的は、可愛い冬物のお洋服のようだ。私が覗き込むと、「ここ、雑誌に出ていたの」と屈託なく笑う。私も持っていた案内チラシを見たが、いまいちよくわからない。
「夏帆ちゃん、いつも可愛い格好だよね」
温かくて動きやすい格好がいいかと思ってダッフルコートに長ズボンとスニーカーの組み合わせで来た私に対し、夏帆ちゃんは短めのズボンにブーツ、クリーム色の可愛らしいコートを合わせた流行を意識した格好だ。
「えへへ、ありがとう。聡に可愛いって思ってほしいじゃん?」
褒められた夏帆ちゃんは、照れ臭そうに笑う。
可愛いって、思ってほしいかぁ。
そんな日が、いつか私にもくるのだろうか。
およそ十分後、ようやく開いた扉の向こうはまさに戦争だった。人の波に乗るようにショッピングモール内に入ると、皆が一斉に四方八方に走り出す。夏帆ちゃんも「雫ちゃん、後でラインするから!」と言い残して一瞬で消えてしまった。恐らく、先ほどマークしていたアパレルショップに向かったのだろう。
私は呆気に取られてしまい、一人ショッピングモール内を歩くことにした。
開店してから数分しか経っていないのに、人気のショップの福袋が置かれたカートは早くも『完売』の札が立っている。代わりに、今度はレジに人の列ができていた。
(どこがいいかなぁ)