なぜだろう? 胸が、キュッと締め付けられるような不思議な感覚がした。

「侑くんは、何が欲しい?」

 妙な気恥ずかしさを感じて、それを隠すように努めて明るく侑希に聞き返した。
 貰ったのだから、当然私もお返しするべきだ。

「俺? 何かくれるの?」
「もちろん。何がいい? 侑くん、明日には出国しちゃうから渡すのは年明けになっちゃうけど」
 
 侑希は少し考えるように視線を宙に漂わせたが、すぐにこちらを見つめてにこりと笑う。

「雫に任せる」
「えー? じゃあ、ちょっと考えてみるね」

 男の子にクリスマスプレゼントを渡したことなんて、幼稚園のクリスマス会以降一度もない。何がいいのかさっぱりわからない

「侑くん」
「んー?」
「好きな子には渡せた?」

 侑希は目をぱちくりとすると、嬉しそうに破顔した。

「渡せたよ」
「そっか。よかったね」

 なぜか、今度は胸がチクリと痛んだ。


 満員列車のような人の波に身を投じて十分ほど並び、ようやく参拝の順番が回ってくる。目の前にぶら下がっている縄を揺らすと、カランコロンと鈴が鳴る。

 二拝、二拍手、一礼。

 さくらと出会ってからネットで調べた、神様への正しいお参りの仕方。
 他にもたくさんしきたりはありそうだったけれど、これは基本中の基本らしい。二回お辞儀をしてからパン、パン、と大きく手を叩き、お辞儀をもう一度。

 さくらは願い事が叶うかどうかは、神様の力の他に自分の努力が必要だと言った。だから、ここでは願いと共に誓いの言葉を言おう。

 いろいろ悩んで、『今年はレシピコンテストで入賞したいです。だから、早めにレシピ作りに取り掛かります』と『食品開発の仕事に付きたいです。だから、理学部に行けるように勉強を頑張ります』と二つ願った。

 このことをさくらに伝えたらどんな反応を示すだろう? きっと、『二つも願うとは、よくばりよのう』と笑われる気がする。
 けれど、そう言いながらもやっぱり応援してくれる気がした。