アドバイスしておいてなんだが、私はこういったことに経験がない。
なんとなく、付き合ってもいない男の子からアクセサリーとかを貰ったら重いかと思ってそう言ったが、特に商品に候補があるわけでもない。
「うーん、探してみる」
顎に手を当てて考え込んでいた侑希は、そう言うと自信なさげに笑った。
「そう言えば雫、進路決めた?」
「進路? うーん、迷っているの」
「迷っている?」
侑希はこちらを見つめ、首を傾げる。
「うん。やりたいことがあるんだけど、私、数学があんまり得意じゃないから──」
私は最近、冷凍食品とかレトルト食品に興味があって、そういった加工食品の研究開発がしてみたいと思った。料理そのものを作るのではなくて、多くの人たちの家庭で美味しい料理を再現させることを可能にする技術で、食卓を笑顔にするための仕事だ。
大手食品メーカーをネットで調べてみると、研究所は理学部出身──つまり理系の人が多いように見えた。けれど、私は理系コースに進む上で一番大事な数学があまり得意ではない。
ぽつりぽつりと事情を話すと、侑希は腕を組んでうーんと唸る。
「よくわからないけどさ」
侑希は薄茶色の目を数回まばたきすると、まっすぐにこちらを見つめる。
「やりたいことがあるなら、チャレンジしてみた方がいいんじゃないかな? だって、俺らの将来、これから何十年も続くんだよ? チャレンジして駄目ならともかく、チャレンジすることを諦めるなんて……。数学が苦手だからって、勿体ない。俺、これからも教えるし」
そう言って、侑希はにこっと笑った。
──チャレンジするのを諦めるなんて……。
その言葉は、ストンと腑に落ちた。
先日の、不思議な体験が脳裏に蘇る。
やりたいことがあったけど、できないと決めつけて他の道に逃げそうになったと言っていたあの女の人。『頑張れ』って激励されて、『はい』って約束したじゃん。
そうだよね。やってみないと、駄目かなんてわからない。
「そうだよね。私、もう一度よく考えてから、お母さんとお父さんにも相談してみる」
私は両手に拳を握る。
頑張ってみようかな、とやる気が湧いてくるのを感じた。
縁とはそれを摑むために努力した人のところにやってくるという、さくら様の言葉も相まって、その一言は私に勇気を与えてくれた。
なんとなく、付き合ってもいない男の子からアクセサリーとかを貰ったら重いかと思ってそう言ったが、特に商品に候補があるわけでもない。
「うーん、探してみる」
顎に手を当てて考え込んでいた侑希は、そう言うと自信なさげに笑った。
「そう言えば雫、進路決めた?」
「進路? うーん、迷っているの」
「迷っている?」
侑希はこちらを見つめ、首を傾げる。
「うん。やりたいことがあるんだけど、私、数学があんまり得意じゃないから──」
私は最近、冷凍食品とかレトルト食品に興味があって、そういった加工食品の研究開発がしてみたいと思った。料理そのものを作るのではなくて、多くの人たちの家庭で美味しい料理を再現させることを可能にする技術で、食卓を笑顔にするための仕事だ。
大手食品メーカーをネットで調べてみると、研究所は理学部出身──つまり理系の人が多いように見えた。けれど、私は理系コースに進む上で一番大事な数学があまり得意ではない。
ぽつりぽつりと事情を話すと、侑希は腕を組んでうーんと唸る。
「よくわからないけどさ」
侑希は薄茶色の目を数回まばたきすると、まっすぐにこちらを見つめる。
「やりたいことがあるなら、チャレンジしてみた方がいいんじゃないかな? だって、俺らの将来、これから何十年も続くんだよ? チャレンジして駄目ならともかく、チャレンジすることを諦めるなんて……。数学が苦手だからって、勿体ない。俺、これからも教えるし」
そう言って、侑希はにこっと笑った。
──チャレンジするのを諦めるなんて……。
その言葉は、ストンと腑に落ちた。
先日の、不思議な体験が脳裏に蘇る。
やりたいことがあったけど、できないと決めつけて他の道に逃げそうになったと言っていたあの女の人。『頑張れ』って激励されて、『はい』って約束したじゃん。
そうだよね。やってみないと、駄目かなんてわからない。
「そうだよね。私、もう一度よく考えてから、お母さんとお父さんにも相談してみる」
私は両手に拳を握る。
頑張ってみようかな、とやる気が湧いてくるのを感じた。
縁とはそれを摑むために努力した人のところにやってくるという、さくら様の言葉も相まって、その一言は私に勇気を与えてくれた。