さくら祭も大盛況に終わり、段々と寒さが身に染みてくる十一月中旬。
 通学路の街路樹の葉はすっかりと色付き、道路を赤や黄色のまだら模様に染上げている。

 隔週の土曜授業があったこの日、私は友人の夏帆ちゃん、美紀ちゃん、優衣ちゃんの三人とお昼ご飯を食べようと、ファミリーレストランへ向かった。

「何にする?」と私が聞くと、
「私、特製ハンバーグの目玉焼き乗せ」と即答するのは夏帆ちゃん。
「あ、いいね」とメニューを眺めていた美紀ちゃんが頷き、
「私、和風ハンバーグかな」と優衣ちゃんが大根おろしの乗ったハンバーグの写真を指さす。

 メニューを見ながら、思い思いに注文を決めてゆく。味付けは違うけれど、皆がハンバーグだ。
 このファミリーレストランの売りはなんと言ってもハンバーグで、ファミリーレストランとは思えないほどのジューシーさが評判になっているのだ。

 注文してしばらくすると、笑顔の店員さんが鉄板に乗せたハンバーグを運んできてくれた。フォークとナイフで切り分けると、中から透明な肉汁が滴り落ちる。見ているだけで涎が出そう。
 一口食べると、口の中にお肉とデミグラスソースの味わいが広がった。うん、美味しい!

「うちの近くにもここのファミレスがあってさ、時々家族で行くんだ。やっぱり美味しいよね」

 優衣ちゃんがお肉を頬張りながら、説明する。
 それを聞いた私は手元を見ながら、首をひねる。

「ファミリーレストランの料理って、アルバイトの人が多いよね?」
「そうだね。一人暮らししている、うちのお兄ちゃんもやっているよ。賄い飯が出るから助かるんだって」
「ふーん」

 私は、カットしたお肉を眺める。ファミリーレストランに行くと、厨房の求人広告をよく見かける。大抵が、『初心者歓迎』と書かれていた。
 それならば、作っている人達は料理のプロではないはずだ。では、なぜ、どの店舗でも同じ味を再現できるのだろう。
 そんなことを考えていると、浮かれたような声がした。
 
「もうすぐクリスマスだねー。夏帆ちゃんはデート?」

 食事をいち早く終えた美紀ちゃんが、興味津々な様子で夏帆ちゃんに声を掛ける。夏帆ちゃんは「うん、まあね」と、少し照れたように笑った。

「うちは冬休み早々、おばあちゃんの家に帰省だよ」と美紀ちゃんが言う。