三連休の中日だからか、はたまた今日の午前中は侑希を含めた一年B組の三大イケメン──これはクラスメイトの女子が勝手に選定した。松本くんが入っていないことに、夏帆ちゃんは大変立腹している。ちなみに、後の二人は久保田くんと、侑希とも仲のよい笹島海斗(ささじまかいと)だ──が午前中のシフトに集中していたせいか、想像以上に忙しかった。
 一緒に午前シフトに入ったクラスメイト達と「忙しかったねー」と慰労しあう。

「雫ちゃん。私、急いでお昼食べて吹奏楽部にいかなきゃだから、またね」
「あ、うん。演奏は二時半からだよね? 見に行くね」
「そうだよ。ありがとう!」

 先に片付けを終えた美紀ちゃんが、ひらひらと手を振りながら去って行く。夏帆ちゃんも先ほど、松本くんと一緒にどこかに行ってしまった。

 さてと、どうしようかな。
 
 私はこのあとどう過ごそうかと、学園祭のパンフレットを取り出した。

 目ぼしいものは昨日のうちに夏帆ちゃんと回ったので、面白かったところをもう一度まわるか、昨日は行かなかった生物部や文芸部のコーナーにでも行ってみようかと思案する。

 でもその前に、お昼ご飯だ。一年B組のメイド・執事喫茶は今とても混んでいるので、身内が行くのは申し訳ない。
 ざっと見て、お昼の腹ごしらえができそうなところを探すと、水泳部の焼きそばかバスケ部のフランクフルト屋か……。

「雫」

 そのとき、不意に声を掛けられてパンフレットから顔を上げる。そこには制服姿に戻った侑希がいて、こちらを見下ろしていた。

「あれ? 侑くん、どうしたの?」

 きょとんとする私の片手を、侑希はむんずと摑んだ。何かを確認するような仕草をして顔をしかめると、「行くぞ」と私の腕を引く。

「え? どこに?」

 私は慌てて空いている左手で自分の鞄を持つ。侑希は私の質問に答えることなく、腕を摑んだままずんずんと歩いた。
 何か悪いことをしただろうかと、不安になる。

「先生ー。けが人です」

 保健室のドアを開けて侑希が中に呼びかけると、椅子に座っていた保険の藤井先生が振り返る。

 どうでもいい情報だが、藤井先生は若くて童顔なので、密かに男子生徒に人気のある先生だ。今日も膝まである白衣を洋服の上からはおり、胸まである髪はくるりんとカールしていた。

「あら、どうしたの?」