午前中の開店直後は人もまばらだった一年B組のメイド・執事喫茶だったが、昼時になると一気に人が増えてきた。
 しかも、次々と入る注文のほとんどがクッキーやプリンなどのデザートではなく食事ものなので、目が回る忙しさ。二つある電子レンジは常にフル稼働。自然解凍OKの枝豆の解凍も間に合わないほどだ。

「昨日より混んでいるかも」
「うん、そんな気がするね。枝豆、もう何袋か解凍し始めちゃっていいかも」
「そうだね。了解」

 一緒に料理係をしている美紀ちゃんが、冷凍庫から冷凍枝豆を取り出す。袋を見て「あ、時間がないときは流水解凍もOKって書いてあるよ」とちょっとホッとしたような表情を見せる。
 私はその間に先にオーダーが入っていたサンドイッチを紙皿に並べた。
 
 続いて今さっきオーダーが入ったポテトフライをレンジに入れようとしていると、がやがやと大人数が入ってくるような気配がした。作業をしながらチラリとフロア席を覗くと、同じ歳位の男女のグループががやがやと入ってくるのが見えた。

「おー、本当に執事だ! すげー」
「写真撮ろうよ。写真」
「やっぱり倉沢くん、格好いいね」

 俄かに辺りが賑やかになる。

 男女のグループは、執事姿の侑希を見つけると盛り上がり始めた。侑希は苦笑しながらもそのグループに近づくと、笑顔で対応を始める。

「あの人達って、雫ちゃんと同じ中学の人達?」

 急ににぎやかになったので、私と同じくフロアの様子を窺っていた美紀ちゃんが目線はそちらに向けたままそう尋ねてきた。
 私は首を横に振る。

「違うと思う」

 仲のよかった中学の頃の同級生達は、昨日来てくれた。今日も来てくれるかもしれないが、今侑希がお喋りをしている集団は全員知らない人達だった。小学校の友達でもない。
 
「倉沢くんの知り合いっぽいね」
「うん、そうだね」

 男女グループは執事姿の侑希と一緒に、スマホで写真を撮っていた。皆笑顔なので、きっと仲のよい友達なのだろう。私が知らないということは、学校繋がりではないはずだ。となると、塾だろうか。

「雫。オムライス六個お願い」

 戻ってきた侑希がオーダーメモをマグネットで調理場の壁に留める。 

「はい。オムライス六個、了解です」

 そこで言葉を止め、私は侑希を見つめた。

「あの人達、塾の人?」