最初に持ったときはそれほど重いとも思わなかったのに、ずっと持っているとじりじりと重さが効いてくる。持ち手の紐が手のひらに食い込んで、痛い。
電車に乗ると、まだ四時前という時間帯のせいか、中は空いていた。私はホッと息を吐いて席に座る。少しの間だけれど、荷物を膝に乗せていられるのは助かる。
「なあ、雫。俺の袋、嵩張りすぎだから、中身を少し交換してくんない?」
「え? いいけど……」
隣に座った侑希が、自分の荷物を指差す。
確かに、侑希の荷物は私の袋以上にパンパンに膨らんでいた。私が頷くと、侑希は早速中身を入れ替え始めた。侑希の袋からは嵩張るストローや紙コップが取り出され、私の持っていた袋のケチャップやソース、食卓塩などが代わりに入れられる。ものの数分で中身をある程度入れ替えると、侑希は満足げに「よし」と言った。
『次は、さくら坂、さくら坂です』
電子音の女性の声でアナウンスが流れ、みんなが一斉に立ち上がる。
駅からさくら坂高校に行くには、長い坂を下らなければならない。私は自分に気合を入れると、荷物を両手に握った。
あれ? なんか、軽い?
すぐに変化に気付いた。電車に乗る前より、明らかにレジ袋が軽い。斜め前を歩く侑希のレジ袋を見て、私はハッとした。
「ねえ、侑くん」
「何?」
侑希がくるりと振り返り、首を傾げる。
「あの、荷物……」
「ああ。交換してくれて、ありがとうな」
にこっと微笑まれて、それ以上何も言えなくなってしまった。少し小走りで後を追い、侑希の隣を歩き始める。侑希はチラッと私の方を見たが、すぐに前を向いた。
「侑くんの好きな人ってさ、さくら祭来るの?」
「来るよ」
「一年B組のメイド・執事喫茶にも来るかな?」
「絶対来る」
「へえ、よかったね」
「まあね」
侑希は意味ありげに片眉を上げると、歯を見せて嬉しそうに笑った。
さくら祭は、もう明後日だ。
侑希の好きな人は、どんな子なのだろう。優しい侑希が好きになるくらいだから、きっと、優しくて素敵な子な気がした。
◇ ◇ ◇
「ポテトフライ二つと枝豆一つ、シチューとテーブルロール入りまーす」
「はーい。ポテト二つに枝豆、シチュー、テーブルロールが一つ、了解です」
電車に乗ると、まだ四時前という時間帯のせいか、中は空いていた。私はホッと息を吐いて席に座る。少しの間だけれど、荷物を膝に乗せていられるのは助かる。
「なあ、雫。俺の袋、嵩張りすぎだから、中身を少し交換してくんない?」
「え? いいけど……」
隣に座った侑希が、自分の荷物を指差す。
確かに、侑希の荷物は私の袋以上にパンパンに膨らんでいた。私が頷くと、侑希は早速中身を入れ替え始めた。侑希の袋からは嵩張るストローや紙コップが取り出され、私の持っていた袋のケチャップやソース、食卓塩などが代わりに入れられる。ものの数分で中身をある程度入れ替えると、侑希は満足げに「よし」と言った。
『次は、さくら坂、さくら坂です』
電子音の女性の声でアナウンスが流れ、みんなが一斉に立ち上がる。
駅からさくら坂高校に行くには、長い坂を下らなければならない。私は自分に気合を入れると、荷物を両手に握った。
あれ? なんか、軽い?
すぐに変化に気付いた。電車に乗る前より、明らかにレジ袋が軽い。斜め前を歩く侑希のレジ袋を見て、私はハッとした。
「ねえ、侑くん」
「何?」
侑希がくるりと振り返り、首を傾げる。
「あの、荷物……」
「ああ。交換してくれて、ありがとうな」
にこっと微笑まれて、それ以上何も言えなくなってしまった。少し小走りで後を追い、侑希の隣を歩き始める。侑希はチラッと私の方を見たが、すぐに前を向いた。
「侑くんの好きな人ってさ、さくら祭来るの?」
「来るよ」
「一年B組のメイド・執事喫茶にも来るかな?」
「絶対来る」
「へえ、よかったね」
「まあね」
侑希は意味ありげに片眉を上げると、歯を見せて嬉しそうに笑った。
さくら祭は、もう明後日だ。
侑希の好きな人は、どんな子なのだろう。優しい侑希が好きになるくらいだから、きっと、優しくて素敵な子な気がした。
◇ ◇ ◇
「ポテトフライ二つと枝豆一つ、シチューとテーブルロール入りまーす」
「はーい。ポテト二つに枝豆、シチュー、テーブルロールが一つ、了解です」