久保田くんが私に気付き、手を上げた。私は小走りで同級生の元へと向かう。集合していたのはさくら祭クラス委員の久保田くんと由紀ちゃん、それに、メイド係のリーダー役の木村芽衣(きむらめい)と男子生徒五人。その中には侑希や阿部くんもいた。

「あれ? 一緒に行くの?」
「うん。木村さんに人手が必要だから手伝えって言われた」

 苦笑する侑希の横から、芽衣ちゃんが口をはさむ。

「荷物持ちだよ。飲み物は配達だけど、冷凍食品って結構重いじゃん? 紙コップやストローもかさばるし」

 芽衣は人差し指を立てて、にっと笑った。

 九人で向かったのは、さくら坂駅の隣駅にある大型ショッピングセンターだった。

 この三階建てのショッピングモールは数百メートルにわたって大小様々な専門店が並び、欲しいものがなんでも揃うのだ。
 普段は来ることのない平日の昼間のショッピングモールは、母親と小さな子供の親子連れが目立った。おもちゃ売り場はたくさんの子供で賑わっている。
 両側にお店が並び、明るい音楽が流れる通路を通り抜け、私達は一番奥の大型スーパーへと向かった。

「えっと、紙コップがもうちょいいるかも」
「了解。紙皿は?」
「もう平気だと思う。ラップが二本じゃ足りないかな? あ、あとゴミ袋も忘れないようにね」

 事前に用意した準備リストを見ながら、次々と商品をカートに入れてゆく。
 手分けして必要なものを探したので、買い物自体は一時間もかからずに終了した。先生からお金を預かった由紀ちゃんが会計を済ませる。

「芽衣ちゃんの言うとおりだったね。人手が必要だ」

 帰り道、両手にレジ袋を持ってぞろぞろと歩く同級生達の後姿を眺めながら、私は苦笑した。かく言う私の両手にもパンパンのレジ袋がぶら下がっている。

「本当だね。俺じゃこんな気が利かなかったから、木村さんに感謝だ」

 隣を歩く久保田くんが相槌をうつ。久保田くんの両手にもレジ袋がぶら下がっている。

「戻ったら、ちゃんと看板できているかなー」
「ペンキを乾かすのに時間がかかるからね。できているといいけど」
「メニューはほぼ完成していたよ」
「本当? 楽しみだな」

 会話しながら、両手に持っていた袋を片手に持ち変えた。