これではまるで、十歳にも満たないような年端もいかない可愛い少女にメンチカツをおねだりされているのに、意地悪をしている女子高生の図ではないか。

「…………。よかったらもう一ついります?」
「いいのかのう」

 一応、いいのかと聞いてはいるけれど、こちらに断る権利はなさそうである。

 うう、さようなら、私のメンチカツ。大好きなのに! あとでもう一度買いに行くから!

 涙を呑んで残ったひとつのメンチカツを差し出す。
 さくらはそれもペロリと平らげると、ご機嫌な様子で私の前に座った。私もさくらと視線を合わせるように、そこに座り込む。

「ねえ。私、侑くんの縁結びのお手伝いって、うまくできているかな?」
「そなたはどう思うのじゃ?」
「うーん」

 逆に聞き返され、私はその場で考え込む。

 夏休み中も、侑希とは週に一度待ち合わせして図書館の自習室に勉強に行った。やることは夏休みの宿題と、一学期の復習など。そして、それが終わった後は『頑張ったご褒美』として、近所のファミレスにパフェやアイスを食べに行ってお喋りするまでが定番だ。

 先日、侑希に好きな子とは上手くいっているのかと聞いた。
 すると、侑希は『今までより二人で過ごすことが増えた』と嬉しそうに笑った。ということは、きっと以前よりは進展しているのだろう。

「少しは、お役に立てている、かな?」
「そう思うならば、自信を持つがよい」

 落ち着いた口調でそう言うと、さくらは美しい虹色の目を細めた。

    ◇ ◇ ◇

 さくら坂高校では年に一度、さくら祭という学園祭がある。

 ネーミングからすると春にやりそうなこの学園祭だけれども、学校の名前を付けただけで桜は関係がない。だから、実際に開催されるのは十月の三連休がある週末だ。
 
 夏休みも明けたこの日、私のクラスである一年B組では、さくら祭でどんな出し物をするかについて議論がされていた。

「この他になにかあるか?」

 担任の山下先生が、黒板から目を離してこちらを振り返る。

 黒板には、『お化け屋敷』『メイド・執事喫茶』『劇』『占いコーナー』の四つの案が出されている。
 教室を見渡して誰も手を挙げないことを確認した山下先生は、こちらを振りむいて教壇に両手をつく。

「どうやって決めるか、案はあるか?」