少しばかりいいと言われる、自分の顔が心底嫌いになった。

 どうやったら雫に迷惑が掛からないかを必死に考えて、出した結論が『俺には既にラブラブな彼女がいる』だった。ショッピングモールでたまたま出会った他校の女子ってことにして、友人達を中心にラブラブアピール。すぐに噂は広まって告白してくる女子はぱったりといなくなった。

 けれど、予想外のことが一つ。雫が自分と距離を取るようになったのだ。

 隣に住む雫は、それまでは宿題などでわからないことがあると、ピンポーンと押して遠慮なく聞きにきた。それに、雫は料理が好きなので時々「作ったの」と言ってお菓子などを持ってきた。けれど、一切そういうことがなくなった。
 ぽっかりと心に穴が開いたような、寂しさを感じた。

 ある日理由を聞いたら、「彼女が嫌だと思うかなって思って」と。雫を守ろうとしてやったことは、結果的に自分からも雫を遠ざけた。雫の性格を考えればすぐにわかりそうなことなのに、当時の俺はそこまで頭が回らなかった。つまり、ガキだったのだ。

 本命の高校受験の日にインフルエンザにかかり三十九度を超える高熱を出したときは、本当に最悪だと思った。
 受けようとしていたのはこの地域で一番の進学校である県立高校だ。けれど、代わりに進学することになった私立さくら坂高校が雫と同じ進学先であると知り、あながち悪くもなかったと思い直した。

 ただ、さくら坂高校には同じ中学から自分達も含めて五人ほど進学した。本人は言いもしないのに、俺にラブラブな彼女がいるという噂は入学一週間後にはほぼクラス全員が知るような周知の事実となった。

 近づきたいけど、近づけない、幼なじみの女の子。それが、自分にとっての雫だった。

 このままじゃ駄目だと思ったきっかけは、仲のいい友達の一言だった。

「俺、彼女出来た」
「え、まじか! 誰だよ!」

 昼休みにバスケをしていた時、仲良しグループの一人、松本聡が嬉しそうにそう言った。相手はいつも雫と一緒にいる、サッカー部マネージャーの水野夏帆だ。

「いいなぁ。俺も彼女欲しい」

 同じく仲良しグループの一人、阿部健太がそうぼやく。健太は中学も同じだった友達だ。

「佐伯とか可愛いじゃん」
「あとは上田とか」