さくら坂の縁結び ~今宵、空に舞うは恋の花~
 さくら坂高校では年に一度、さくら祭という学園祭がある。

 ネーミングからすると春にやりそうなこの学園祭だけれども、学校の名前を付けただけで桜は関係がない。だから、実際に開催されるのは十月の三連休がある週末だ。
 
 夏休みも明けたこの日、雫のクラスである一年B組では、さくら祭でどんな出し物をするかについて議論がされていた。

「この他になにかあるか?」

 担任の山下先生が、黒板から目を離してこちらを振り返る。

 黒板には、『お化け屋敷』『メイド・執事喫茶』『劇』『占いコーナー』の四つの案が出されている。
 教室を見渡して誰も手を挙げないことを確認した山下先生は、こちらを振りむいて教壇に両手をつく。

「どうやって決めるか、案はあるか?」

 しばらくシーンと静まり返った教室の中で、一人の生徒──久保田彰人(くぼたあきひと)がおずおずと手を上げた。

「お化け屋敷はA組がやると聞いたので、違うものがいいと思います」

 教室にいる生徒達からも、賛成の声が上がる。山下先生は黒板の『お化け屋敷』の文字の上からチョークで取り消し線を引いた。

「残り三つだ。どうやって決める?」
「多数決がいいと思います」

 また、彰人が手を上げてそう言った。

「いいでーす」
「賛成!」

 彰人の言葉に、何人かの生徒が反応するように賛成の声を上げる。山下先生は両手を胸の前で下に抑えるようなポーズをして、静かにするようにと促した。

「他に意見はあるか?」

 教室は静まり返り、誰も何も言わない。

 その後、クラス全員による投票が行われ、さくら祭の出し物は『占いコーナー』との僅差で、『メイド・執事喫茶』に決まった。



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