「うーん。お互いのことを知るとか? とりあえず、認識してもらえないと好きにもなってもらえないし」
「なるほど。お互いのことを知るかぁ」

 視線を上げると、青い空には今日のお弁当に入っていた唐揚げみたいな形の白い雲が浮いていた。

 お互いのことを知るって、具体的にはどうすればいいんだろう? 言うのは簡単だけれど、いざそれを実行に移す手助けをするとなると難しい。しばらく考えたけれど、名案は浮かばない。

 結論。恋とはなんとも、複雑難解なもののようです。

「ところでさ。昨日の放課後にね、聡と一緒に流行りのタピオカミルクティーのお店に行ったの」

 一旦話が切れたところで、夏帆ちゃんが我慢しきれないようにそうきりだす。実は、最初からこの話題を話したくてたまらなかったみたい。

「へえ。さくら坂駅前の? どうだった?」
「うん、駅前の。めっちゃ美味しかったよ! タピオカがね、もっちもっちなの。雫ちゃんも今度行ってみてよ」
「うん。行ってみる」
「でね、でね。並んでいるときに、手を繋いじゃった!」

 夏帆ちゃんは顔を両手で包み込むと、きゃーっと小さな悲鳴を上げる。

 駅前のタピオカミルクティーのお店は、とても人気でいつも行列ができている。そこで並んで待っているときのことだろう。

 指の隙間から見える頬がほんのりと赤い。
 なんか、可愛いなぁと思った。
 
「このー! ラブラブだー」

 このこのっと肘でツンツンすると、夏帆ちゃんは照れたように笑う。

 幸せそうでなによりです!
 親友の嬉しそうな顔に、自分まで嬉しくなる。

 彼氏、かぁ。

 自分にもそんな人ができる日がいつかくるのかな、なんて思う。
 侑希に引き続き、夏帆ちゃんまで大人の階段を上っている。
ブルータス、お前もか! 
 一人だけ子供のまま置いてきぼりにされたような気がして、ほんのちょっとだけ寂しく感じたのは、胸の内に留めておくね。

    ◇ ◇ ◇

 さくら坂高校クッキング部の活動日は週に一回、木曜日だ。
 毎回、持ち回りで部員達がレシピを決めて、それに従った材料を持ち寄って料理を楽しんでいる。

 夏休み前に残す活動日もあと二回となったこの日は、私がレシピを決める当番だった。