その表情を見てピンときた。きっと、既に好きな人がいるんだ。脳裏に昨日の侑希の言葉が蘇る。

 ──どうか、あの子と両想いになれますように。

 侑希は付き合いの長い私から見ても、とても素敵な男の子だと思う。
 それに、侑希の縁結びが成就した暁には、私の願いも成就する。

 ビバ! 幸せな未来。

 これはなんとしても成就させなければならない。

「昨日ね、侑くんが縁結びの神社から出てきたのを見たの。──侑くん、頑張って! 侑くんより格好いい男子なんてなかなかいないよ!」
「え?」

 目に見えて、目の前の侑希が狼狽える。私はそんな侑希を勇気づけるように、さらに続けた。

「だから、勇気を出して頑張れ! 私、応援するし、協力もするから!」

 これが侑希以外だったら、こんな無責任なことは言えない。けれど、侑希に限っては大丈夫。だって、格好いいし、頭いいし、親切だし。大抵の女の子はいちころだ。
 よし、君はかっこいい。だからさっさと告白してきてくれたまえ。そうしたら私も大助かりなのだ。

 侑希は目を見開き、ぽかんとした表情でこちらを見下ろした。私は両手にこぶしを握りしめて、頑張ろうね、のポーズをして見せる。

「──えっと、……わかった。じゃあ、協力して」
「うん」
 
 協力ってなにをすればいいんだろう? 同じ学校の子かな。人気(ひとけ)のない場所に呼び出す? 連絡先を聞き出す? 何をお願いされるのかとドキドキしていると、こちらを見下ろして、侑希はゆっくりと口を開く。

「付き合ったときに上手くいくように、時々相談に乗って」
「よし、任せて!」

 条件反射のようにバシンと手で胸を叩いて答えてから、はたと我に返った。
 侑希は二年も付き合った彼女がいたけれど、私は彼氏はおろか、好きな人すらできたことがない。相談してくれてもアドバイスできないかもしれない。

「相談って、私で平気かな? 私、そういうの、詳しくない。侑くんの方が詳しいよ」
「いいよ」

 侑希があっけらかんと答える。

「詳しくなくていいよ。雫が相談に乗ってくれたら、それでいい」

 薄茶色の瞳がまっすぐにこちらを見つめている。

 確かに、侑希はとてもモテるから、学校内でも彼女になりたい人はたくさんいる。私以外の子には相談しにくいのかな、と思った。

「わかった。お役に立てるように頑張る」