今日はさくら様にお礼を言いに行こうと二人で話し合って、夏休み中だけれども高校のあるさくら坂駅まで来た。けれど、さくら様へのお供え物を買う段階で、田中精肉店のメンチカツを買うのか、風来堂の抹茶白玉を買うかで議論になったのだ。

 結局、私達は相談して両方とも買っていくことにした。

「私、さくら様にお土産は田中精肉店のメンチカツがいいって言われたよ。ご主人のお父さんが、売り上げアップでお客様とのご縁をお祈りしたら夢にさくら様が立ったんだって」
「俺は風来堂の抹茶白玉をリクエストされたよ。いつもそうしていたし」

 さくら坂を下りながら、困惑したように侑希がそう答える。その表情を見ていた私は、とあることに気付いた。

「いつも? ということは、抹茶白玉を持って何回も行っているってことだよね? ──もしかして、いつも二つ買って一緒に食べていたのって……」
「さくら様だよ。あのときはまだ雫がさくら様を知っているなんて知らなかったから、適当に濁したけど」

 侑希はなんでもないことのように、そう答える。私は、予想外のことに目を丸くした。

「私、てっきり塾の女の子と食べているんだと思った」
「なんで塾の女の子?」
「…………。侑くんの好きな子が、塾の女の子だと思っていたから……。お花見も一緒に来ていたし……」

 それを聞いた侑希は目を見開いた。そして、口元に手を当てて考え込むような仕草をする。
 
「お花見?」
「うん。さくら坂公園に塾の子と二人でいるのを見たの」
「それ、他の奴も一緒だったよ。もしかして、風来堂に行った日に雫が急に落ち込んだのも、花見の日に機嫌が悪かったのも──」
「わー! 余計なことは思い出さないで!!」

 急激な気恥ずかしさが込み上げてきた。
勘違いで無関係な塾の女の子に嫉妬していたら、まさか相手がさくら様だったなんて! それに、塾のみんなで花見に来たのに二人きりだと早とちりするなんて、正直、恥ずかしすぎる。

 侑希は色々と悟ったようでくすくすと笑い、肩を揺らす。こちらを覗き込んだ侑希と目が合うと、手を差し出された。

「雫、手繋いでいい?」
「え!? なんで?」

 突然の提案に、私は戸惑った。学校の近くで手を繋ぐなんて、ちょっぴり恥ずかしい。
 地元の駅でもやっぱり恥ずかしいけど。

「繋ぎたいから」
「恥ずかしいよ」
「嫌?」