いつから夏帆ちゃんは私の気持ちに気が付いていたのだろうと思い、頬が赤らむのを感じる。侑希は松本くんに「よかったなー」と肩を組まれて祝福されていた。

「さ、花火はこれから本番だよ。見ようよ」

 夏帆ちゃんが手招きしたのを合図に、私や侑希もレジャーシートに座る。自然と夏帆ちゃんの隣に松本くんが座ったので、私と侑希は隣同士になった。今の今で、ちょっぴり気恥ずかしい。

 チラリと隣を窺い見ると、大空を見上げていた侑希が視線に気が付いてこちらを向く。そして、照れたようにはにかんだ。

 胸が、トクンと跳ねた。そして、じんわりと温かさが広がる、不思議な感覚。
 慌てて上を眺めると、大空にまた赤や黄色の大輪の花が咲く。ドーンと大きな音がした。

 今日見たこの花火を、きっと一生忘れないだろう。そんな、確信めいた予感がした。

 恋は、切なくて、嬉しくて、楽しくて、──そして温かいものだと思った。

    ◇ ◇ ◇

 侑希と付き合い始めて二週間。

 まだまだぎこちない二人だけれど、先日は一緒にショッピングモールに行ってデートをした。たまたま目に付いたショップでお揃いのチャームを買ってスマホに付けると、なんだか胸がこそばゆい。
 次は、デートに人気のテーマパークとカフェに行ってみようねと約束した。

 幼なじみでずっと一緒にいた私達だけれど、こういうところには二人で出かけたことがなかったので、何もかもがとても新鮮。もちろん、図書館での勉強もきちんと続けている。

 この日は通い慣れたさくら坂商店街を二人で訪れていた。そこで会話していた私は、ちょっと信じられない思いで隣にいる侑希を見上げた。

「え? 田中精肉店のメンチカツでしょ?」
「違うよ。風来堂の抹茶白玉」

 侑希は首を傾げて、同じことを繰り返す。

 晴れて侑希と付き合い始めた私は、さくら坂神社のさくらに会って侑希の縁結びの手伝いをしろとお告げを受けたことをカミングアウトした。それを聞いて吃驚(びっくり)した様子の侑希が話したことに、私は本当に驚いた。
 なんと、侑希も同じくさくらに私に勉強を教えろとお告げを受けていたというのだ。

「私達、結局さくら様の手のひらで転がされていたんだね」

 顔を見合わせて、二人で苦笑する。けれど、全く嫌な気持ちはしなかった。