お母さんは自分の仕上げたこの髪形に満足したようで、にっこりと微笑みお父さんの方を振り返る。ダイニングテーブルで新聞を読んでいたお父さんはチラリとこちらを一瞥(いちべつ)すると「ああ」と素っ気なく言った。
「きっと、照れているのよ。お父さん、若い頃、お母さんにそれはもう、べた惚れだったんだから。あ、今もべた惚れのはずだけどねー」
お母さんは私と目を合わせると、いたずらっ子のように笑った。
「さっき倉沢さんの奥さんに会ったんだけどね、今日、侑くんも花火大会に行くみたい。一緒なの?」
鏡越しにお母さんがそう聞いてくる。私は首を横に傾げて「違うよ」と答えた。
侑希には先日図書館で勉強した際に、好きな子を誘うようにとエールを送った。その後のことは何も聞いていないけれど、何も言ってこないということは、きっと今日はその子と出掛けるのだろう。 自分が応援したこととは言え、そう考えるとやっぱり胸がチクンと痛む。
「違うの? てっきり一緒だと思っていたからこんなに可愛くしちゃったわ。変な男の子に声をかけられても、付いて行っちゃ駄目よ?」
「付いて行かないよ。夏帆ちゃんも一緒だし」
「でも、気を付けるのよ」
頬に手を当てて心配そうにするお母さんに向かって、私は苦笑する。
今日の花火大会には、夏帆ちゃんと一緒に行く。てっきり夏帆ちゃんは彼氏の松本くんと行くのだと思っていたのだけど、松本くんは用事があって一緒に行けないらしい。とびきりおめかしして一緒に行こうと、つい先日学校で誘われた。
自室に戻って持ち物の準備をしていると、スマホがピポンッと鳴って緑色のランプが光った。
『予定通り五時に駅の改札集合! とびっきり可愛くして来てね!』
画面を確認すると夏帆ちゃんからだった。私は画面をタップすると素早く返信する。
『一緒に買ったやつ着ていくよー。すごくいい感じ』
暫くすると、クルクルと回って喜びを表現するウサギのスタンプが送られてきた。私からも可愛いスタンプを返信する。
「いつまでも落ち込んでいていても、仕方がないよね。楽しまないと」
自分で自分を元気づけるように独りごちると、鏡に向かってにこりと笑う。
ちょうど目に入った色つきのリップクリームを塗ると唇にほのかなピンク色がさし、華やかさが増した気がした。さあ、元気出していきましょー!
「きっと、照れているのよ。お父さん、若い頃、お母さんにそれはもう、べた惚れだったんだから。あ、今もべた惚れのはずだけどねー」
お母さんは私と目を合わせると、いたずらっ子のように笑った。
「さっき倉沢さんの奥さんに会ったんだけどね、今日、侑くんも花火大会に行くみたい。一緒なの?」
鏡越しにお母さんがそう聞いてくる。私は首を横に傾げて「違うよ」と答えた。
侑希には先日図書館で勉強した際に、好きな子を誘うようにとエールを送った。その後のことは何も聞いていないけれど、何も言ってこないということは、きっと今日はその子と出掛けるのだろう。 自分が応援したこととは言え、そう考えるとやっぱり胸がチクンと痛む。
「違うの? てっきり一緒だと思っていたからこんなに可愛くしちゃったわ。変な男の子に声をかけられても、付いて行っちゃ駄目よ?」
「付いて行かないよ。夏帆ちゃんも一緒だし」
「でも、気を付けるのよ」
頬に手を当てて心配そうにするお母さんに向かって、私は苦笑する。
今日の花火大会には、夏帆ちゃんと一緒に行く。てっきり夏帆ちゃんは彼氏の松本くんと行くのだと思っていたのだけど、松本くんは用事があって一緒に行けないらしい。とびきりおめかしして一緒に行こうと、つい先日学校で誘われた。
自室に戻って持ち物の準備をしていると、スマホがピポンッと鳴って緑色のランプが光った。
『予定通り五時に駅の改札集合! とびっきり可愛くして来てね!』
画面を確認すると夏帆ちゃんからだった。私は画面をタップすると素早く返信する。
『一緒に買ったやつ着ていくよー。すごくいい感じ』
暫くすると、クルクルと回って喜びを表現するウサギのスタンプが送られてきた。私からも可愛いスタンプを返信する。
「いつまでも落ち込んでいていても、仕方がないよね。楽しまないと」
自分で自分を元気づけるように独りごちると、鏡に向かってにこりと笑う。
ちょうど目に入った色つきのリップクリームを塗ると唇にほのかなピンク色がさし、華やかさが増した気がした。さあ、元気出していきましょー!



