「新選組の隊服は浅葱色のダンダラ模様でした。このダンダラ模様は、赤穂浪士(あこうろうし)に準えたものです」

赤穂浪士――忠臣蔵のことだ。
祖父が好きで幼い頃にドラマを観たことがある。
忠義を尽くして主君の仇を討ったとされる四十七人の武士。

「赤穂義士達は主君の仇を見事に討って、最期には潔く切腹しました。その際に着用したのは白ではなく浅葱の揃えだったそうです。このことから、浅葱色は切腹裃(せっぷくかみしも)の色、なんていう風にも言われていたんです」

初めて聞く話になるほどと相槌を打ちながら続きを促す。

「武士たる者、忠義に生きるは当然。死する覚悟を常に忘れないように。――そんな意味が込められていたんだと思います。局長の近藤さんも赤穂浪士が好きで、気に入っていたんですよ。……まあこの隊服の考案者は芹沢さんだったので、彼が亡くなってからはこの羽織を着る人も減っていきましたけどね」