「一年の三分の二は地上で暮らせるが、後の三分の一は冥界に戻らなくてはいけない。娘のいないこの時期は、母デーメーテルは悲しみ、地上では作物が採れなくなってしまう」

「なんだか……切ない……」

「春になると母と娘は再開を喜び、野には花が咲く。ペルセフィネが冥界で過ごさなければいけない季節には草木は枯れ、寒く、穀物は実ることがない」

「冬ってこと?」

「そうだね。おとめ座は春の星座なんだ。だから冬にはおとめ座は夜空に上がらず、大地は凍てつくと伝えられているんだ」

「まるで四季みたい」

「そう、四季が出来たのもこの時からだって言われてるんだよ」

「へー! おもしろい! 星座からそう繋がっていくんだ」

「星座には色々な神話があって、諸説あるけど、それがなかなか切ないものが多かったりするんだ。その説話が現代の星座や星回りと綿密に結びついていたりする。それがおもしろいんだよ」

「うん、先生の話し聞いていて、そう思う」

よほど星が好きなんだと思わせるくらい、先生は楽しそうに星の話をしてくれた。

それは……私が悩んでいたことを無理に聞いたりせず、少しずつ少しずつ心を溶かしていくように……。