「スピカはおとめ座の一等星なんだ。おっとり優しく白く光る星。星座には色々と神話があってね、おとめ座にもおもしろい物語があるんだ」
「神話? 先生がいつも読んでいる本?」
「そうそう、おもしろいんだよ。おとめ座のモデルって豊穣の女神デーメーテルの娘、ペルセフィネって伝えられているんだ。ペルセフィネはとにかく美しく、冥界の神であるハデスが自分の妻にしたいと略奪してしまうんだ」
「略奪!? 連れ去られちゃうの!?」
「そう。冥界にさらわれてしまった娘、ペルセフィネのことを母は悲しみ嘆いた。農業の神である母、デーメーテルの悲しみに、地上では草木が枯れ、作物は一つとして採れない。やがて人々は飢え、死ぬ人たちも出てきた」
「え……怖い話なの!?」
私は恐々聞くと、先生は「ははは」と笑った。
「デーメーテルは娘を返して欲しいとゼウスに願い、娘ペルセフィネは地上に戻ることが出来、二人は再開を喜び合った。しかし、ハデスはこのことを良く思わなかった。ペルセフィネが地上に戻る前に冥界のザクロの実を食べさせた」
「ザクロの実!? ペルセフィネはどうなっちゃうの!?」
「このザクロは食べると二度と地上の人間のようには戻れないという実だった」
「人間には戻れない……」
先生の話にどんどん夢中になる自分がいた。