ベンチに座り、うつむく私に風が起こり、フワリとライムの香りがした。 それに気づき、顔を上げた。 「羽田さん?」 その低い優しい声、口元のホクロ。 「葉山……先生……」 真っすぐ見つめると、私の気持ちを伝えるように、静かに涙が溢れた。 「……」 私を見つめる先生の瞳。 そっと先生の手が私の頬に触れた。 ビリッと走る、あの痛みに一瞬目を閉じる。 そしてまた、そっと目を開けると、そのまま真っすぐ私を見つめてくれている先生の瞳があった。 先生の手が、そっと涙をぬぐう。 先生――――。