家に着くと、そのまま二階に駆け上がり制服を着替える。
時計を見ると、まだ16時過ぎだった。
どれだけ早く走って来たのかと自分でも驚く。
「美月!? 美月どうしたの!?」
なんの言葉もかけずに二階に上がって来たからなのか、お母さんが驚いたように部屋に入って来た。
「今、学年副主任の金田って先生から電話があってね……」
「誰、それ?」
私はそう言うと、そのまま家を出た。
"誰、それ?"
いつの間にか私の頭の中から、その人の存在は消えていた。
それくらいの思いだった。
その人の話を聞きたくないという拒否する思いが、スルリと口から出てしまっていた。
「美月ー!」
玄関先でお母さんの声が聞こえても、私は振り返ることなく駅まで走った。
最寄りの駅から6つ目、葉山先生の学校がある星沢駅に来ていた。