「俺はそんなに覚えられない顔か!?」
「あの……」
「金田先生!」
そこへ別の先生が現れた。
このジャージ姿、丸々したお腹、この低い身長……その姿を見て、学年主任の先生だとわかった。
「金田先生、羽田ですが……」
ヒソヒソと耳打ちする。
「相貌失認?」
金田先生がチラッと私の方を見てそう言った。
「……障害だかなんか知らんが、社会人になったら今よりもっと人付き合いも増えるんだ。おまえ自身が頑張らないと自分が困るんだぞ!」
「……」
その言葉に目の前が一瞬、真っ暗になった。
「金田先生! それはちょっと……」
気まずそうながらも吐き捨てるように言った金田先生を、主任の先生が止めに入る。
私は何も言わず、職員室を飛び出した。
「羽田!」
何かが……私の何かが……ここに居てはいけないと強く拒否反応を示していた。
自分でもビックリするくらい走った。
飛び乗った電車でも落ち着かない。
心の中のモヤモヤが治まらない。
最寄駅に着くまでの数十分、車内ドアの取っ手を強く握りしめ、深く深くうつむいていた。