「ただいまー」

着替えを済ませ二階から降りてくると、お父さんが帰って来ていた。

スラリと背の高い細身のお父さんは、そのスタイルがとても印象的だ。

だから外にいても案外見つけやすくて助かる。


「えー、あなたもっと遅くなるのかと思ったー。まだ私たちもご飯前なのよ。みんな揃ってよかったー」

「そうか間に合ってよかった」


二人のラブラブなやり取りも毎日だから、私は無視して一足早くダイニングテーブルにスタンバイ。

並んだサラダにドレッシングをかけ、すぐにでも食べてしまいそうになる。


「ちょっと美月! お父さん迎えに出て来なさいよー」

「えー」


優しくて穏やかなお母さんと、それも上回るくらい優しくて家族を大切にしてくれるお父さん。


二人が私を大切に育ててくれたことが、わかるくらいのその思いを感じたのは、あの事故があった時だった――――。