「ただいまー」


「おかえりー」

パタパタとスリッパの音を立てながら奥から走って来る。

この、ちょっとクセのある足音は母親だとすぐに分かる。

っていっても、家族三人暮らしだし、出てきてくれるのはお母さんしかいないんだけど。


「美月、遅かったじゃなーい」

「ちょっと、のんびり歩いてきちゃった」

「えー、暗いところは気をつけてよー」

「ハイハーイ」


私はお母さんにお弁当箱を手渡すと洗面所へ向かった。

「今日、お父さん遅くなるんだってー。だから夜ご飯二人なのよー」

「ふーん」

「ふーんって何ー!?」


手を洗いながら気のないカラ返事をすると、ちょっと離れたキッチンから大きな声で不満を漏らす母。


「お父さんいなくて寂しいじゃないー」

「……」

そんなに好きかっ!ってツッコミたくなるほど、お父さん好きなお母さん。

大恋愛で結婚した二人だと聞いたことがあるから、今でもラブラブな二人。

見ているこっちは暑苦しいけど、ま、円満だから安心する。