学校帰り、少し遠回りして見上げる星空も、今日はすぐに下を向いてしまう気分だった。
電車に乗ると空いている席を見つけ、私はカバンから本を取り出すと読むフリをしてうつむいた。
『つかれた……』無意識に口から出そうになるのをぐっとこらえた。
人の多いところや人を探すという行動は、すごく頭を使う。
自分が今まで記憶力があるとか思ったことは一度もないけど、その記憶の引き出しを片っぱしから引っ掻き回す。
それはものすごくパワーをつかう。
各駅停車の電車に揺られ、何度目かのドアが閉まった後、うつむいた私の目の前にチラチラと本が見えた。
「!?」
その本には"星座と神話"と書かれていた。
見たことのある、そのタイトルの本に驚き見上げると、私の座る席の隣のドアの前に葉山先生が立っていた。
「先生!」
「眠そうだね」
先生は私にだけ聞こえるような小さな声で言った。