「圭ちゃん、おはよー」
「先生おはよー」
にぎやかな声に驚いて見ると、違う車両から流れて来たのか、星北高の生徒たちに先生が囲まれていた。
『圭ちゃん』と呼ぶあの子は、その言葉で、この間と同じミルクティー色の髪をした子だろうとすぐに分かった。
その親しげな呼び方に、胸がチクッと痛んだ。
「次は中央学園前駅ー中央学園前駅ー」
降りる駅のアナウンスが流れると、一瞬淋しい気持ちになった。
先生が乗って来た駅から三駅。
見つめ合える短い時間が終わるこの瞬間が切なくなる。
一人で電車に乗るのが、あんなにも嫌だったのになぁ……。
今ではもっと乗っていたいとさえ思ってしまう。
電車を降り、先生の方を振り返る。
女子生徒に囲まれ、なんとなく不機嫌そうに見えた。
……って言っても、正直先生の細かい表情までは読めない。
それでもなんとなく、自分の都合のいいように先生の表情を見てしまったりもする。
「……」
だって……そうでもしなきゃ、先生と同じ学校の生徒をうらやましいと思ってしまうから。