「おい! うちの生徒に何か用か!?」


「えっ!? うちの生徒!? 先生?」

「やべ……行こーぜ」

そっと顔を上げると、バタバタと走り去る男子たちの後ろ姿が見えた。


私はホッと息をつくと、声をかけてくれた人に「ありがとうございます」と頭を下げ、急いで歩き出した。

その場から早く去りたかった。

一人でいることが怖かった……。


行こうとする私の腕にビリッという痛みが走り、驚いて振り向いた。

「!?」

見ると、今、声をかけてくれた人が私の腕を掴んでいる。


「あ……あの……何か用ですか!?」

私は摑まれた腕を引き離した。


「羽田さん?」

「え!?」

その低い声に聞き覚えがあった。

私の腕を掴むその人の手を離した時、フワリとライムの香りがした。


「……葉山……先生……?」

その香りに一瞬にしてホッとする自分がいた。

私の様子を見て、先生の口角が上がり二コリと微笑んだ。

口元のホクロ……。

葉山先生だ……。