学校から最寄りの"中央学園前駅"まで歩いて10分もかからない。

今は部活には入っていないけれど、遅くなった帰り道、少し遠回りして帰るのが好きだった。

しっかり整備された広めの歩道、その道の脇には季節の緑や花が咲く。

暗くなり始めた夜空を見上げながら歩く。

昔から夜の空は好きだった。

何か夢があるわけでもなくて、その日その日が楽しくて、それだけで日々充実していた。

でも、何かを願う時、いつも夜空を見上げていた気がする。

それは今も変わらない。

今日もいくつもの春の星を探しながら、遠回りした駅までの道を歩く。



部活が忙しくなり始めたエー子とは帰りは別々。

人がたくさん集まることや場所は苦手だけれど、知っている人が誰もいないことも不安になってしまう……。

まぁそんな都合よくはいかないけど……。


乗り込んだ電車、今日は乗客が少なく結構空席が多かった。

連結部分に近い座席の一番端に座ると、この間本屋で見つけた薄い冊子を再び開いた。

とても短いその物語を何度も読み返す。

なんだろう……何かスッキリしない。

スッキリしないものが何なのかも分からない……。

ドラゴンヘッドとドラゴンテイルの物語……。

私はスッキリしない何かを探し求め、何度も何度も読み返していた。