「ねー美月! 近くに行ってみよ」

「え!?」

「だって昨日のお礼もしなきゃだしさ。せっかく話せるようになったんだから!」

「ちょっとエー子!」

相変わらず強引だ。


いつものようにエー子に手を引かれ、人波をグイグイとかき分けて行く。

本当は心のどこかで葉山先生のことをもっと知りたいと思う自分がいて……でも、自分にはもう恋なんて出来ないんじゃないかって恐怖もあって……。



「葉山先生!」

エー子の声に顔を上げると、目の前に葉山先生が立っていた。

スーツの色は違うけれど、口元のホクロで先生だと分かる。

そして今日も香る、ライム。

いつから読み進めているのか、星の本を片手に。

葉山先生だと分かるヒントがいっぱいで、嬉しくなった。