「美月! 葉山先生来たよ!」
エー子は私の方へ振り向きそう言うと、制服の袖をクイクイと引っ張った。
周りに聞こえないように気をつかっているつもりだろうけど、まったくもって丸聞こえなのが気にかかる。
二年前、「気になる人がいる」とエー子に告白した時、エー子は飛び上がるほど喜んでいたっけ……。
いつの頃からか私の周りの男子は『友達』ではなく、下心を見せ始め、なんの前触れもなく私の心を無視するように気持ちを打ち明けてきた。
私が気持ちを受け入れられなければ去って行って、友達でもなくなってしまう。
"友達だと思っていた"
繰り返されるその現実に、私は苦しくなるばかりだった。
それをエー子は知っているから、私が気になる人がいると言った時、すごく喜んでくれたんだと思う。
でもまさか、今になってエー子がまた、あの人のこと……葉山先生のことを色々調べていたなんて……。