思い返せば、この気持ちをエー子に打ち明けたのはもう二年前。
まだ、相貌失認になる前だ。
高校入学して初めて電車通学になった。
その頃の私はもう、それだけでテンションが上がっていた。
違う街へ毎日通う。
なんだか大人になったみたいで、初めて買ってもらった定期券にも興奮した。
電車から見る街並みも、季節によっては一つ駅が変わるだけで、その景色も変わっていく。
その小さな変化を感じることも新鮮だった。
電車通学にも慣れた頃、一人の男性が視界に入った。
普通にスーツを着て周りに溶け込んでいるように見えて、他の人より頭一つ大きい身長が目立って見えた。
その人は、いつも同じドアのところで乗客を背に本を読んでいた。
ただ、それだけ。
なんでその人が目に入ったのか分からない。
毎日、毎日、同じ時間その場所にいる、その人がとても気になった。
毎日見つめるうち、ぐうぜん目が合って、それが何度も重なった。
毎日、毎日――――。